第2話
大陸中央にある我が国アルバーティは東西南北それぞれ四つの国に隣接する小国であり、その大きさは他国の上位貴族が納める一領地ほどしかなく経済的にも他国に随分と劣っている。
しかしアルバーティは豊かな自然に恵まれ気候も穏やかなで肥沃な大地からは毎年多くの農作物が収穫され、水も豊富で飢えを知らない土地である。
建国から2000年を超えその間一度も倒れることのない国ではあるがその歴史は戦いの歴史でもある。
神々から祝福される地とも呼ばれるほど恵まれたこの国を他の権力者が手中に収めたいと思うの当然の事である。
北のアルスール王国、南のサクレール皇国、西のハクナン獣王国、東のガヴァリス帝国。
現在はこの四か国に囲まれており水面下で謀略や策略が渦巻き、どの国も機を窺っているようだが表立ってアルバーティに争いを仕掛けてくる国はない。
国全体が強力な魔物が跋扈する高く険しい山々に囲まれており攻め入ることが難しく地の利がある。
更に2000年の歴史の中でアルバーティ軍の優秀さはどの時代においても発揮され正面から争いを仕掛けた国は国力を大きく落とし破綻につながることも少なくなかった。
そう言った歴史があり隣国はうかつにアルバーティに手を出すことができないでいた。
もう150年以上戦争を経験していない。
アルバーティ軍の卓越した兵力と優秀さを支えているのはまさに神々の祝福によるところだった。
2000年以上前戦乱に乱れた大陸は常に戦火に覆われていた。
多くの血が流れ多くの民の命が失われることを嘆き悲しんだ一人の少女が神に祈った。
神は少女の祈りを聞き少女に特別な祝福を与え、さらに異世界より一人の少年を召還した。
少年は神々より加護を受け、その力は強大で、その武力を用いて一人で万の兵を討ち滅ぼしたといわれる。
少女は慈愛の力で多くの人々を癒し命を助け、次第に二人はたくさんの民の想いを背負い建国をなした。それが今のアルバーティであると伝えられている。
少女は神聖なる神の使いとして聖女と呼ばれ、少年は神より勇を授かるものとして勇者と呼ばれた。
更に勇者と聖女は神より与えられた力を多くの者に分け与え二人には劣るものの強力な力を持つ民が現れその力は血脈によって引き継がれ代を重ね薄まってはいるがその力は他を凌ぐ。
そしてアルバーティの王族には初代国王である勇者とその王妃である聖女の血が流れている。
と、ここまでは、王族に伝わる口伝なのだが真実は時代の流れとともに薄れていくもので勇者や聖女の存在はもはやおとぎ話の様な扱いとなっており、さらにアルバーティ王族以外の者はそのおとぎ話すら知らないものがほとんどである。
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