Case:本山らのが、聖女様として異世界に召喚されたら
ラノベの王女様
本山らの二周年記念ノベル?
「うーん、むにゃむにゃねむい……ってあれ!? ここはどこですか!?」
「おお! 成功した! そなたが本山らのだな?」
目覚めると、見知らぬ男の人が私に話しかけてきました。
「なにごと!?」
慌てて起き上がり、周囲を見渡します。
金色の壁が光る広々とした空間。日常生活では目にすることのない豪華な調度品。床一面に敷かれた赤い絨毯。そして周囲には甲冑姿の人達。ここは……お城?
ということは私の目の前にいる人って……おそらく王様でしょうか。
いや、もちろん私は令和の日本に生きる二〇歳JDなのでリアルに王様を見たことはありませんが、お城で王冠かぶって威厳たっぷりに喋る人物、これは誰がどう見ても王様としか言いようがないですね。○ラゴンクエストや○ァイナルファンタジーといったファンタジーRPGのプレイ経験がない私でも分かります。
髪の毛もヒゲも白いことから王様はかなりの高齢だと思うのですが、服の上からでも逞しさのわかる体つきなので、「弱々しいお年寄り」というよりも「歴戦を乗り越えた覇者」という感じです。
大学の課題とYoutubeでの生放送を終えてクタクタな疲れを癒やすべくお家でぐっすり寝ていたはずなのに、どうして私はお城で王様の話を聞いているのか……
あれ? もしかしてこのシチュエーションって……
「あ、あの……ここはどこですか?」
「ここは地球とは違う世界。つまり異世界だ」
「某政治家みたいな構文ですね……」
「私がそなたをこの世界へと召喚した」
うわー、予想はしてたけどやっぱりですよ。まさかの異世界転移。
JD狐巫女VTuberが実在するので異世界が存在すること自体は疑ってませんでしたけど、私が転移の対象者に選ばれるなんてことは予想外です。
どうせ呼ぶならもっとタイミングのいいときにして欲しかった……パジャマ姿を見られるのは恥ずかしいんですよ。
「突然呼び出してしまったことは謝罪しよう。すまなかった。だが、この世界に迫る危機に対処するには我々だけの力では限界に来ていたのだ。王としてのお願いだ。協力してはくれないだろうか」
「えーと、どうして私を呼んだんですか?」
「この世界は魔族に侵略されている。人間側も抵抗はしているが魔族は腕力でも魔力でも人間より勝っているため、我々が負けるのは時間の問題だ。つい最近も、隣国が魔族に乗っ取られたと聞く」
「なるほどなるほど……」
「我が国もいつ魔族に乗っ取られるか分からない。解決法が見つからず頭を抱えていた私だが、この国に古くから伝わる言い伝えを思い出したのだ。『世界が混沌に包まれし時、蒼き星の少女を導くべし。その者、聖女となりて混沌とした世界に再び光をもたらすだろう』とな」
「それが私を召喚することだったんですね」
「そうだ。私は書庫の魔導書を漁り、召喚の儀へと辿り着いた。膨大な魔力が必要なため、何度もできる代物ではない。藁にもすがる思いだった」
「あの……地球には帰れるのでしょうか?」
「それは大丈夫だ。ただ、送り返すのは召喚以上の魔力を消費し、そのためには大勢の協力が必要となる。魔族との争いが終わらないことには準備もままならない」
「そうなんですね……」
ですよねー。そう簡単に帰れたら話になりませんよねー。
「急な話ばかりで失礼なのだが、ここでそなたの能力を見せてもらえないだろうか。召喚された者は強大な力が与えられると聞く。試しに『ステータスオープン』と言ってみてくれ」
「えぇ……ちょっと恥ずかしいかも……やらなきゃダメですか……?」
「頼む、この世界を救うためだ」
そうですよね。世界の危機ですものね。
……はあ、恥ずかしがってても仕方ないのでやりますか。
「ステータスオープン!」
名前:本山らの
種族:女子大生狐巫女
レベル:100
HP:99999
MP:99999
攻撃力:999
防御力:999
魔力:999
魔法防御力:999
素早さ:999
回避:999
魅力:999
職業:聖女
スキル:アイテムボックス、聖魔法レベルMAX
空中にウィンドウが表示されました。
ああ……確かに異世界へ転移されたんだと実感します。
てか、「女子大生狐巫女」は種族なんですかね……?
「おお! 素晴らしいステータスだ! そなたを選んだ甲斐があった!」
「あれ? 地球人の中から適当に選ばれたわけじゃないんですか?」
「そんなわけ無かろう。適当な人間を聖女に選べば国が滅んでしまう。幸いにも、我が国には聖女候補となる者の素性を調べられる魔道具があった。おかげで膨大な少女の中からそなたを選べた」
「どんな魔道具ですかそれ……」
「これだ」
そう言って王様が懐から出したのは……スマホじゃん!
「ここ異世界じゃないんですか!?」
「細かいことは気にするな。そなたが気にすべきなのは魔族との戦いだ」
あ、これはツッコんだら負けなタイプのゆるふわ世界観ってことですね……
「それで、私が選ばれた理由っていうのは?」
「聖女たる者、まずは魅力を周囲に伝える技術がなくてはならん。そなたはAdobe製品を巧みに使いこなしラノベ好きVTuberとして圧倒的な知名度を有しておる。Photoshopでの画像加工、InDesignでの組版、Premier Proでの動画編集、どれも女子大生とは思えぬレベルだ。残念ながらこの世界にAdobe製品は存在せぬが、そのスキルがいつかきっと役立つだろう」
「そんな日が来るんですかね……?」
「また、聖女とは即ち宗教的権威であり神聖さも必要だが、らの神社で巫女として働いており、その点に関しても申し分ない」
「巫女さんしてるだけでそこはクリアなんですね……」
「精神的余裕も欠かせない。そなたは中学受験経験者ゆえ高い文化資本を有しておる。私のような王族とも問題なくコミュニケーションできるというのは大きい。多くの者と接する立場である以上、聖女に礼儀正しさは必要不可欠だからな」
「どんだけ私のこと知ってるんですか……」
これじゃ王様じゃなくてどこぞの王女様ですよ。
「それに胸も魅力的だしの(ボソッ)」
「ん? 何か言いましたか?」
「何も言っとらんよ」
「ならいいですけど……」
「……さて、そろそろそなたには聖女としての仕事を依頼しよう。まずは魔族に乗っ取られたと噂されている隣町に行き、もし噂が本当であれば魔族の手から町を取り戻して欲しい。大変かもしれないが、先程見たようにそなたの能力値は規格外だ。必ずできると信じている」
ふむ、やるしかないですよね。
初めてのラノベヒロイン(主人公?)体験、せっかくなので楽しむか!
「よし、頑張ってみます!」
「有難い。これは餞別だ。受け取ってくれ」
王様から聖女の衣装と地図、あとお金を頂きました。
新しい服は嬉しいですね。これでパジャマ姿とはおさらばです。パジャマはアイテムボックスに収納するとしましょう。
着替えをし、お城を抜け、城下町の門を出ると、そこは広々とした草原でした。
「風が気持ちいい~」
JD生活では中々味わえない感情に浸ってると……
「見つけたぞ! お前が噂の聖女だな!」
そこにいたのは……王様のコスプレをした男の子?
「誰ですか……?」
「俺はゴブリンキングのレイ! ゴブリンキングってのはゴブリンの中のゴブリン、ゴブリン界の王、つまり上位魔族だ! へへん、いきなり上位魔族と遭遇してビビっただろ!」
「へえ、レイくんって言うんですね。自己紹介ありがとうございます」
「どういたしまして……ってちっがーう! 魔族の驚異となりうるお前を倒しに来たんだよ! 可愛いからついうっかり返事しちまっただろ!」
「えへへ、てれてれ……」
魔族からですが、異世界でも可愛さを認められるのは嬉しいです。
それにしても、レイくんってゴブリンキングなんですね。ラノベに出てくるゴブリンって体は緑色で頭がつるつるしてますけど、目の前にいるレイくんは耳が少し尖っているだけで、それ意外は人間と変わりありません。肌の色は私と同じですし、髪の毛だって生えてます。
ゴブリンの王様だそうですが、私を召喚した王様は男性的な力強さを感じたのに対し、レイくんは体つきも声も中性的です。可愛いですね。
「ふふん、人間の相手は初めてだが問題ない! どうせ魔族には勝てないんだからな! お前の冒険はここで終わりだ! 覚悟しろ!」
「ちょ、ちょっと!? 暴力はいけませんって!」
「問答無用!」
棍棒を振りかざして襲いかかるレイくん。
あわわ、どうしましょう……私はよわよわ狐だから戦うのは苦手なんですよね。
……ってあれ? レイくんの攻撃がスローモーションに見えます。私のステータスが高いからでしょうか。これなら簡単に躱せます。
「な、何いっ!? 俺の攻撃が避けられるだと!? もう一回だ!」
スカッ! ←避ける音
「もう一回!」
スカーン! ←避ける音
「もう一回!」
スッカーン! ←避ける音
「はあっ、はあっ……ちくしょーっ! 何で当たらないんだよ! おいお前、避けてばっかりいないで大人しく俺の攻撃を受けろ!」
「痛いのは嫌なので回避に専念させてもらいます」
ちょっとラノベ好きVTuberみたいなこと言ってみたり。単行本ですけど。
「くそーっ! もう怒ったぞこのおっぱい狐め!」
「ちょっと!? それは公序良俗違反ですよ!」
「うるさい! 人間なのに俺を馬鹿にするからだ!」
これは……レイくんに少しおしおきをしないといけませんね。
「聖なる雷!」
「あばばばばばばばばば!!!!!!!(プシュー)」
魔法をレイくんにぶつけてみました。
魔族だから聖なる攻撃は弱点だと思いますが、威力を抑えてるのでそこまでのダメージにはならないようにしたつもりです。「人間の相手は初めて」って言ってましたし、あんまり悪い子じゃないと思うんですよ。
近づいてレイくんの様子を確かめに行きます。うーん、気絶してるみたい。
こうしてじっくりとレイくんの顔を見ると萌えますね。頬をぷにぷにしたくなります。まさか私にはおねショタ趣味があったのか……?
このまま放っておくのも何だか可哀想ですね。それじゃ……
「うう……」
「あ、目が覚めました? 良かった!」
「あれ? 俺は一体……」
「私が介抱しました! どやらの!」
「あ、ありがとう……じゃねーよ! 何で魔族の俺が人間に膝枕されてるんだ!?」
「気絶したまま放っておいたら可哀想かな、と思って」
「何でお前が敵を助けるんだよ」
「誰かが困ってたら助けるのは当然ですよ。あと、『お前』じゃなくて私のことは『らのちゃん』と呼んでください」
「どうしてお前に指図されなきゃ「らのちゃん」
「だからお前が「ら の ち ゃ ん」
「お前「ら の ち ゃ ん」
「わ、分かったよ……ら、らのちゃん…………」
「はい、合格です」
レイくんは物分りがいいので助かります。やっぱり良い子ですね。
「今日は私の勝ちってことでいいですか?」
「まさか上級魔族の俺がこんな目に遭うなんて……こうなったら……おりゃ!」
「レイくん!?」
レイくんは私の膝から顔を上げると、何と私の胸をぎゅっと鷲掴みにしました!
「ちょっとレイくん!?」
「人間のくせにメロンの入ったメロンパンみたいな
「べた褒めですか? 照れますね……」
「切り替え早すぎだろ! どんだけポジティブなんだよ!? まあいい、俺を介抱してくれたことに免じて……き、今日のところは退散してやる! けどこのまま俺が見逃すと思うなよ! 覚えてろーっ!」
「あ、行っちゃった……」
大急ぎで去っていくレイくん。もっとお話したかったのに……
私を狙ってるみたいですし、冒険してればまたどこかで会えますよね?
Case:本山らのが、聖女様として異世界に召喚されたら ラノベの王女様 @ranobe_no_oujosama
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