第40話

図書館。


資料を持ち寄って。


研究会。


小乃実。

「超一流の技術や知識を持った人。」

「スポーツ・芸術・科学・仕事など様々な分野に存在し。」

「エキスパートや専門家などと呼ばれています。」

「エキスパートの優れた能力にはどのような特徴があり。」

「またエキスパートになるにはどうすれば良いでしょうか。」


すみれ。

「オランダの心理学者であるデ・フロート。」

「チェスの世界的プレーヤーであるグランドマスター。」

「アマチュアにチェスの局面を提示し。」

「指し手を決めるまでの思考過程を比較しました。」

「グランドマスターはアマチュアより良い手を案出することができましたが。」

「分析した局面の数には違いはありませんでした。」

「グランドマスターとアマチュアの違いは直観の精度にあり。」

「グランドマスターは良い手の候補を直観的に絞り込むことで。」

「局面を効率良く分析していました。」


小乃実。

「直観的な判断を行う能力は生まれつきの素質ではないですね。」

「グランドマスターの場合は。」

「トレーニングによって身につけたチェスの戦術に関する知識に基づいています。」

「アメリカの心理学者であるアンダース・エリクソンの研究では。」

「エキスパートになるために。」

「長年にわたる熟考したトレーニングが必要だとされます。」

「熟考したトレーニングというのは。」

「目的達成のために自分で考えながら集中して行うトレーニングであり。」

「チェスに限らず様々な分野において。」

「エキスパートは一日三時間程度の熟考したトレーニングを十年以上毎日続けているとのこと。」


すみれ。

「熟考したトレーニングを続けて技術と知識を身につけるにつれて。」

「脳の構造が変化すると脳科学者は説きます。」

「ロンドンのタクシー運転見習いがトレーニングを開始した時点と。」

「一人前になった時点での脳の構造を比較され。」

「運転手の免許取得時には。」

「空間把握や空間的な位置の記憶にかかわっている海馬の一部が大きくなっていました。」


小乃実。

「ロンドンでタクシー運転手?」

「ロンドン全域の道路や建物に関する試験に合格する必要がありますよ。」

「これは世界一難しいと言われるほどの難関です。」


すみれ。

「フライトシュミュレーターで。」

「自分のミラージュ2000でSu-27Pを2機相手に。」

「ずっと格闘戦を楽しんでいるプレイヤーが居ました。」

「DCSworld。」

「なんとミサイルを巧みに回避。」

「ミサイルの追尾能力を読んでいて。」

「ミサイルが出来ない運動をして避けるんです。」

「F-16CでMig-29を2機相手にしたプレイヤーも。」

「勝ち目が無ければ逃げたり。」

「再突入を繰り返しました。」


小乃実。

「池上彰という人が著書で。」

「ブログを書いていれば文章力が手っ取り早く上がります。」

「ほんとうでした。」


すみれ。

「池上彰さんは知識人ですから。」

「誰もが認める所です。」


小乃実。

「原子炉と放射能については専門知識。」

「専門書では素人の浅い知識なんて馬鹿にされてしまいます。」


すみれ。

「年に100ミリシーベルト以下なら健康被害はありませんし。」

「原子炉も火力発電とミカニズムが似てますし。」


小乃実。

「私達は自然科学。」

「神が作ったものを解き明かして。」

「使えるようにする。」


すみれ。

「脳科学。」

「つまり才能の正体は鍛錬。」

「特に直観の精度なんですね。」


小乃実。

「玄人には敵わないもんです。」


紗耶と瑠璃が入場。


紗耶。

「脳のことをちょっと意識すると毎日が変わってきます。」


瑠璃。

「最新の研究の成果は凄いものです。」


すみれ。

「古代ローマの資料あった。」

「ローマは正攻法の戦術が常。」

「同時代の三国志の世界では騙し合いが日常茶飯事。」

「勝てば何をやってもいい。」

「ローマ軍においては敵国を騙して戦った記録は存在せず。」

「仮にそんな戦い方をしていたとしても。」

「主張しない文化があったみたい。」


紗耶。

「ローマの神々への信仰心は強かったよ。」


小乃実。

「日本では八幡神が武家の守り神として厚く信仰された。」

「神道は武士の世界で頻々に登場する。」

「庶民も社殿によく通っていたものですし。」

「古い記録で紀元前10年頃の鹿島神宮とか?」

「正確には知らない。」


すみれ。

「日本もローマと通じるところがある?」

「度々正々堂々やろうじゃない。」

「一騎打ちは男の華ってもの?」


小乃実。

「あれはかっこいいです。」


紗耶。

「自分を示す。」

「みたいな。」


すみれ。

「現代では大人しくてひ弱な人間。」

「大衆の一員しかいない?」

「街を歩けば大衆の一員で溢れている。」


紗耶。

「それは呪詛です。」


小乃実。

「すみれちゃんも荒れてしまう時期なのねぇ。」


すみれ。

「そうかも。」

「そんな年頃。」

「かっこつけたいし。」

「私だって言いたい事はいっぱいある。」

「もう少し無鉄砲で向こう見ずになりたい。」


瑠璃。

「私も背伸びしたいです。」


すみれ。

「背伸びしようよ。」

「自己主張とか。」


瑠璃。

「ん?」

「日本人はなんで自己主張しないのでしょうか。」


小乃実。

「変に大人しいよね。」

「むかしのような立派な男子は久しく見ないけれど。」


紗耶。

「好色に耽ってだらしがないのであれば。」

「そこら辺にいっぱい。」


瑠璃。

「まともな男性は探さないと見つかりません。」


すみれ。

「大衆教育のせい?」


瑠璃。

「学校教育は大衆的であって。」

「大衆用にチューニングされてませんか?」


すみれ。

「うちの所はそんなことないんやけど。」


紗耶。

「漫画もあるよ。」


すみれ。

「ゆるゆり~!?にはハマったわあ。」


瑠璃。

「のんのんびより?は良いものです。」


紗耶。

「大侵略!?イカ娘は宝物になったわ。」


小乃実。

「ご注文はわたしですか!?は結構うっとり。」


すみれ。

「今度は喜劇にしようかな。」


瑠璃。

「諧謔と喜劇は別物。」

「なんか難しそう。」


すみれ。

「創作は天神様。」

「菅原道真公。」

「何回かお尋ねすれば。」

「力を貸してくれます。」

「創作好きな神様ですし。」


瑠璃。

「書き物は思想が大事だと聞きますが。」

「好きこそものの上手なれ。」


小乃実。

「小説が好きな人はなんか書けるみたいですね。」

「アマチュアは鳥なき島の蝙蝠らしいです。」


紗耶。

「凡人しか居ないと退屈やわあ。」

「昨日の晩。」

「戦線4やってたけど。」

「戦車強過ぎない?」

「修理奴隷を載せて。」

「撃っては退いて撃っては退いて。」

「一度もやられない。」


すみれ。

「そう言われると。」

「歩兵でプレイしている人って頭悪いかも。」

「そういうのが好きなんですね。」


紗耶。

「ゲームは費やした時間が長いほど英雄になれる。」

「わたしはまだ1か月も経過してない。」

「20セットやっただけ。」


小乃実。

「弱いもの虐めになってませんか?」


紗耶。

「ルサンチマン虐殺ゲーム?」

「ちょっと酷だと思ってきた。」


すみれ。

「戦争かあ。」

「湾岸戦争は2003年の出来事。」

「まだ戦争はいつでも発生するんや。」


紗耶。

「F-15イーグルはここでも健在。」

「フルクラムを空戦機動で墜落させたり。」

「制空型は撃墜されたことがありません。」

「現在はF-22ラプターが最強の戦闘機で。」

「模擬戦にて。」

「F-22を1機失うまでにF-15を100機以上撃墜。」

「まぐれで練習機に撃墜判定されちゃった。」


瑠璃。

「兵器は人の力の集大成でもある。」

「芸術品でもあります。」


小乃実。

「だからなんかしっくりくるような。」

「美しいようなカッコいいような。」


すみれ。

「兵器から派生した民間機や。」

「インターネットも元々は兵器の部類ですし。」

「そこから宇宙科学まで届いたりも。」


瑠璃。

「未来科学では秒速2万キロが出せます。」

「金星までは有人飛行できるそうです。」


紗耶。

「木星の風速1000メートルは無理かな。」

「一応。」

「無人機が突入したことがある。」

「データ採取のち。」

「大気圏で燃やした。」


すみれ。

「最も近いクエーサー。」

「24億光年。」


紗耶。

「木星まで7億4000km。」

「一等星アークトゥルスまで36万光年。」


瑠璃。

「まあいい乗り物が開発されれば。」

「もしくはいろいろ解き明かせば。」

「20億光年くらいはなんとかなるでしょう。」


すみれ。

「1万年必要だと思います。」


小乃実。

「頑張ればもっと早いですよ。」


すみれ。

「若い地球説とか。」

「そもそも星に寿命とか。」

「どうやって計測したんですか?」


紗耶。

「自分に寿命があるから。」

「いろんなものに寿命があると信じた。」

「岩は劣化した事が無いのに。」

「少なくとも岩は天地創造の時からそこにあるよ。」


瑠璃。

「神知まで到達すれば理解できるのに。」

「人間の知恵ではそこで止まれ。」


小乃実。

「なんだか可哀そう。」

「未解明なものはまだいっぱいありますし。」


すみれ。

「戦争なんやけど。」

「第二次世界大戦後ならいっぱいあるで。」

「朝鮮戦争からベトナム戦争。」

「各国もリビアに攻撃とか。」

「アフガニスタンとか。」

「イランもやってたり。」

「ロシアで紛争があったり。」

「日本で無くて良かったね。」


瑠璃。

「東西冷戦で開戦なんてなってたら。」

「地球の半分くらいは消えていたでしょう。」


すみれ。

「人間って自滅が好きなんやね。」


小乃実。

「国際社会。」

「国連のおかげで大きな戦争はありそうもない。」

「下手すれば袋叩き。」


紗耶。

「政治について愚かな解釈をする馬鹿が後を絶ちません。」


小乃実。

「政治について愚かな見解はけっこうありますよ。」

「馬鹿な解釈が多いもんです。」

「責任転嫁?」


すみれ。

「スケープゴーティングからの私刑?」

「ハエのような人間は。」

「他人の傷口にたかりたがる。」

「文明が高度化して複雑化。」

「社会が過酷になってない?」


瑠璃。

「最近は特に過酷ですね。」

「いつから社会は過酷に?」


すみれ。

「詭弁とかも多くなりましたね。」

「正しいようで正しくない理論。」

「相手を言い負かす目的で使用する。」


瑠璃。

「言い負かせればいいので。」

「正否は関係ないです。」


紗耶。

「詭弁まで飛び交うの?」


小乃実。

「メンヘル化した人が多くなってませんか?」


紗耶。

「それは仕様です。」


すみれ。

「我々は危害を加える力を持っている。」


瑠璃。

「世の中には月夜ばかりはない。」

「意味。」

「毎日が足元の明るい月夜ばかりではないから。」

「せいぜい気をつけろ。」

「あまりいい気になるな。」


小乃実。

「それは脅し文句です。」


すみれ。

「せいぜいブラックな所に就職しないように注意するわ。」

「むかしは自由人がギリシャにいて。」

「奴隷制度によって労働から解放されていた。」


紗耶。

「彼らは公的な場を重視して。」

「文明の向上や改善に貢献していた。」


瑠璃。

「いまやそういうのは良識です。」


すみれ。

「西暦500年頃。」

「カッシオドルス。」

「文法・修辞学・弁証法・算術・幾何・天文学・音楽。」

「自由七科を公式化。」

「キリスト教の理念に基づきながら。」

「ギリシア・ローマの学問をひとつにした集大成。」

「カッシオドルスとは?」

「東ゴート王テオドリックの秘書官。」


小乃実。

「学ばない女性は真面目とは思えない。」

「創作の女性のほうが上回った事がありました。」


すみれ。

「アトリエシリーズとか?」


瑠璃。

「痛かったらごめんね!なんて言って笑顔で爆弾を投げたり。」

「兵器から工芸品。」

「薬から原油まで作りますから。」

「やりたい放題な女性たちですよ。」


すみれ。

「おまけに戦い慣れている。」

「文句なし。」


紗耶。

「少年漫画とか。」

「どうせ主人公が勝つから。」

「おもしろくない。」


すみれ。

「それは妄評です。」


小乃実。

「女三人寄れば姦しい。」

「四人でもそうですね。」

「このフロアには誰も居ませんが。」

「そろそろこの辺りにしておきましょう。」


瑠璃。

「資料揃えました。」

「三時間くらい滞在しましょう。」


紗耶。

「わたしも専門分野は得意だけれど。」

「それ以外はやっぱり駄目。」

「そんな無能な人材は今時使い物にならない。」


すみれ。

「捨て駒。」


瑠璃。

「それは仕様です。」


小乃実。

「では各自。」

「集まっているとどうも。」

「話が弾みます。」

「有益な話ですが。」

「今は資料が必要です。」


すみれ。

「向こう行くわ。」

「こんだけ集まれば足りる。」


図書館で。


話が弾んだ学問ガール。


専門分野が強くても。


他を学んでいなければ。


人工知能に取って代わられるほど。


無能な人材になれ果てます。


真面目に女性をやるから。


今。


図書館に居るんです。


久しぶりの祝日も。


図書館に籠もって。


豊富な公式資料の中で。


論語の一文。


学問と勉強は違う。


勉強して大学に入り。


素晴らしい会社に就職する利益の為の手段が勉強となってしまった。


学問とは自分自身の成長の為であり。


生きている限り。


生涯をかけて学ぶのです。


別の一文。


子曰く、学は及ばざるが如くするも。


猶おこれを失わんことを恐る。


学問とは追いつくことのできないものを追うようなもので。


それでも追いつくことができないと恐れるようでなければならない。

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