第34話
来客。
巫女服の女性。
ミディアムに小さなカチューシャ。
小乃実(このみ)
「こんにちは。」
「このみです。」
「瑠璃ちゃん知っているよね。」
「補佐をしている巫女です。」
すみれ。
「すみれちゃんやで。」
「要件はなんやろうな。」
小乃実。
「巫女のアルバイトのお誘い。」
「瑠璃ちゃんがすみれちゃんを是非お迎えしたいって。」
すみれ。
「悪くはないで。」
「ちょっと考えている点があってな。」
「とりあいず体験だけでいい?」
小乃実。
「形式主義ではないです。」
すみれ。
「それ知ってる。」
「物の本質を形式にあるとみて。」
「形式を重んじて内容を軽視。」
「または無視する立場。」
小乃実。
「形式主義者みたいな幼稚な考えは致しません。」
「私達は実質にかなっているもので。」
「いつでも採用しますからね。」
すみれ。
「所でお姉さん。」
「いくつ?」
小乃実。
「21ですよ?」
「あらー?」
「そういう趣味?」
「気が合うなあ。」
すみれ。
「いんや。」
「かつて怪傑と言われた女子高生がいて。」
「似てるからなあ。」
小乃実。
「そんなに有名だった?」
「今は文芸学を専門としていますよー。」
「いつの間にか瑠璃ちゃんと一緒に勤めています。」
すみれ。
「あらら図星。」
「でもわざわざ来てくれてありがとう。」
「ちょっと別格なお茶があるので。」
「どう?」
小乃実。
「では頂きましょう。」
「急ぎの用ではありませんし。」
お菓子を出して。
ゆっくり急げ。
適当な時間で下がります。
綺麗なひとでした。
口数が多くはありません。
雅言が得意技みたい。
すみれちゃん。
金曜日の午後の出来事。
土曜日は自由登校。
学校は無視して。
電車に揺られ。
鶴岡八幡宮。
小乃実。
「いらっしゃい。」
すみれ。
「凄い場所もあるんやね。」
小乃実。
「良ければ手解きしますよ。」
すみれ。
「頼むわ。」
「いい機会やし。」
小乃実。
「神道は日本書紀・古事記が解説書。」
「神様は寛容で全知全能。」
「習うより慣れよ。」
「新しい分野や知識の開拓で縁も深まる。」
「基本的に不可知論。」
「認識できないかもしれない。」
「以上です。」
すみれ。
「うわあ簡潔。」
「わかりやすいわあ。」
瑠璃ちゃんがやってくる。
事務室に案内された。
瑠璃。
「しばらくぶりですね。」
すみれ。
「元気でなにより。」
瑠璃。
「いつでも歓迎しますので。」
「たまにいらしてください。」
すみれ。
「そうさせて貰うわあ。」
「そろそろ何か決めたいし。」
「人生とか生き方とか。」
「そっちの方向に考えるのは支持できないから。」
「そのうち何かに惹かれて。」
「神社に寄ってきた女子高生すみれちゃんやで。」
瑠璃。
「私は自分の愚かさからの解放をただひたすら願っている。」
小乃実。
「私も実は。」
「人々の愚かな考え方に感化されちゃって。」
「中々抜けなくて。」
「富・名声・権力・素敵な異性?幸福はもとより。」
「かなり自分まで愚かになってしまって。」
「人の価値判断とかけっこう愚の骨頂。」
「まずこれが抜けないと何も分かりそうもないです。」
すみれ。
「逆説的に言えば。」
「この世の価値判断は人が定めたものやし。」
「偶然決まった価値判断は信用できんわ。」
「根拠があって真実であればいいわなあ。」
「お金は大事やし。」
「名声は愉快やし。」
「権力は面白いわなあ。」
「異性は別に要らないけれど。」
「このような見解が正しいのであれば支持するで。」
「誤りであればすべてがひっくり返るだけやろ?」
瑠璃。
「時代を重ねて。」
「いつからか人々の愚かさが目立つようになりました。」
「良い方向に行っているのなら構いませんが。」
「邪な方向に行っているような感覚を覚えます。」
すみれ。
「神様の前で悩むだけ。」
「キルケゴールと同じく。」
「空想の自分を求める。」
「可能性の放棄。」
「世間の考えに縋り依存する。」
「なるようにしかならないと開き直る。」
「4つの絶望がある。」
「それ故に悩みがあって。」
「あれか?これか?と試行錯誤ってなわけ。」
小乃実。
「それをお伝えしたらどうですか?」
「希望の反対は失望ですよ。」
すみれ。
「そうやなあ。」
「そのほうがええかも。」
「また平和な時代が来たら。」
「ゆっくり旅でもして。」
「境内で悩んでいるかもしれんわ。」
「行ったり来たりして。」
「言葉で説明できん。」
「またよろしくな。」
爽やかに参拝。
のち。
見送られて帰路へ。
電車で揺られて。
まだ未解明なものは多い。
解き明かしたから科学も使える。
科学は人類が新しく開発したパワーでは無く。
解き明かして使用可能にしたもの。
自然科学。
教科書を見て悩んでいるすみれちゃん。
自由な思考で試行錯誤。
駅のホームにて。
スマホが稼働。
すみれ。
「只今留守にしております。」
「ご用件の方はピーという発信音の後にご用件をどうぞ。」
「ピー。」
あかね。
「ちょうど通りかかるから。」
「喫茶店で珈琲飲まない?」
すみれ。
「位置を伝えるわ。」
「待ってる。」
合流して喫茶店。
すみれ。
「青人草としてどうすればいいとか。」
「どこにも載ってないから。」
「あれかこれか悩む。」
あかね。
「神々を参考にするしかないよ。」
すみれ。
「聖アクィナス。」
「キリスト教は被造物としての在り方が提唱されているん。」
あかね。
「カトリックはもう答えが出ているかあ。」
「わたしたちも同じなんだよ。」
「きっと。」
すみれ。
「言い得て妙やわあ。」
今日は図書館へ。
素晴らしい資料が眠っている宝の山。
学生は図書館が基本なのかな?
途中。
楽しく暮らそうと試みている人々の横を通り過ぎる。
あかね。
「享楽的な生き方がまかり通ればいいのですが。」
「失敗したらどうするのでしょうか?」
すみれ。
「暮らしの事ばかりに囚われると。」
「享楽主義になっているかもしれんわ。」
「ああいう連中をすみれちゃん哀れに思う。」
図書館に入り。
散開。
良い資料を持ち寄ったり。
日葵ちゃんとも合流。
三人の連携が冴えます。
真面目に女性をやっている女子高生。
懸命な模索は続きます。
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