第84話



「それよかお前、まだあいつと付き合ってんのかよ?」


「ん? ああ、まあ……そうとも言うかな」


「おかしーじゃん! ぜってー別れる流れだったじゃん!」


「うっさいなあ」


「お前なあ、俺は押してダメなら引いてみろさくせ」



 美里はチビ朔をドンと突き飛ばした。



「そんなことより、とにかく詩音ちゃんに謝って。土下座で謝罪して」


「なにすんだよ! こっちはこっちで大事な話を」


「なんで私がそんな主任みたいなこと……!」


「おい聞けよ!」


「それで詩音ちゃんも許してくれるって。ね、詩音ちゃん」


「うん」



 抱えられた詩音は、美里のでかい胸を手の置き場にみたいにしている。


 ぐぬぬぬ~~~。


 私は辺りを見回す。親子連れからカップルから老人まで、幅広い世代の人達が行きかう賑やかなこの広場で……土下座……?



「……いや。絶対しない」



 そっぽを向くと、美里はふーと息を吐いた。



「ま、こんなところで土下座なんて、さすがに私もそこまで鬼じゃないから」


「美里お!」


「踊りながらでいいよ」


「……」



 で、いいよ……?



「詩音ちゃん何の歌が好き?」


「妖●体操第一」


「じゃ、それでいこうか。ちょうどあんた、振り付けマスターしたって言ってたじゃん。前にしつこく見せてきたでしょ」


「……チビ朔、なんの話してたんだっけ? 今ならちゃんとあんたの話を」


「そんじゃ、音楽スタート」



 チビ朔はスマホで音楽を流しだす。



『妖怪体●第一! ウィッス! ヨーでるヨーでるヨーでるヨーでる、妖怪でるけんでられんけん』



 しょうがないので、私は踊った。



「今日は朝か~ら、いじめした~あんまり生意気な、の、でぇ~! どうして詩音をいじめたの!? どうして詩音をいじめたの!? よ・う・か・いのーーせいなのね、そうなのね!? ウィッスッ! いま何時!? 復讐ターイム……!」



 バチン!!



「ヴィスッ!!」



 詩音に飛びかかったところ、美里の強烈なビンタで返り討ちにされた。私は尻もちをついて頬を抑える。



「なによなによ~~~!! これは妖怪のせいなんだからね!?」


「私があんたを殴るのも妖怪のせいよ!!」



 私は立ち上がり、一つ咳払いをして美里に顔を寄せた。



「いいのかな~? 美里に殴られたって、主任に言いつけちゃおっかなあ~? 主任、怒るだろうなあ~~ま、私がこんなこと言ってしまうのも、妖怪のせいなんだけ……」


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前……」



 美里はなにか唱えだした。



「去ね! 妖怪ッ!!」



 ゴチン!!



「ウィッス~~~!!」



 猛烈な頭突きにより、私に取り付いた邪悪な妖怪は去った。




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