第19話



『こんばんは。どうしてもお話したいことがあり、本日二度目となるメールを送りつける無礼をお許しください。さて、このメールが届いた瞬間に、詩絵子様の高貴な頭の中には、(どうやってメールを打っているんだろう)という素朴な一文が流れたことかと思います。詩絵子様がどのように想像されているかは分かりませんが、駄犬は今手がつりそうな歯がゆさに耐えながら、背中で縛られた指でキーボードを叩いている次第です。画面が見えないのとキーの位置が分からないという不具合がございますので、誤字脱字は大目に見ていただければ幸いです。しかしながら、こうして歯がゆさを耐え忍び、詩絵子様への想いを綴るというのは、これはこれで至福のときでございますゆえ、どうか心を痛めないでくださいね。ところで気になったのですが、本日訪れた小さき彼は、詩絵子様の高校時代の同級生であり、駄犬の隣人でもある汐崎朔なる人物でしょうか?間違っていては申し訳ないのですが、彼はなかなかに見所のある青年だと思いました。まず、人を罵倒したり、痛みつけたりすることに対し、ほとんど抵抗がないという点は素晴らしいと思います。この血まみれの生臭い駄犬にこんな好みがあるとは今まで気づきませんでしたが、小さき彼に痛めつけられ、罵倒され、詩絵子様にトドメを刺されるというのは、これはこれで素敵な夜を過ごせるのではないでしょうか。もちろん僕は詩絵子様の忠実な駄犬ですので、詩絵子様がこの案を一蹴されるのでしたら、致し方ないことだと受け止めます。それはそうと、詩絵子様と出会ってからというもの、駄犬の肥溜めのような人生は……』




 ひょえ~~~……チビ朔! ダッシュで逃げろッ!



 つづくッ!



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