第2話 ふたつの月

 それから2ヶ月ほど経過したある日のことである。私は”前世”で”死んだ”ときの夢を見てうなされ、大声で日本語で助けを求める寝言を発した。”母親”が慌てて近寄ってきて、心配そうに私の顔を覗き込んだあと、夜中だというのに着替えさせられてどこかへ連れて行かれることになったようだった。


 家から出るのは始めてで、一体どこに何をしに連れて行かれるのかもわからない私の不安を煽るように赤い月と青い月が夜道を明るく照らしていた。


 連れて行かれた先は占い師か祈祷師のような老母のところだった。言葉がわからないので何を話しているのか全くわからないな、と思っていた矢先、老母は流暢な日本語で私に一方的に話してきた。


「あんた、地球の日本からの転生者だろう? ここじゃ珍しくないんだ。転生者専用のスクールがあるから無駄な心配は要らないよ。一人で歩けるようになるまではママのお世話になっとくんだね。ヒャヒャ!」


 学校に関する心配が全くの杞憂だったことがわかると同時に、本当に異世界転生とやらをしてしまったという事実を受け入れなければならない現状に頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。

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