元気いいねえ。オネエたち。何かいいことでもあったのかい?
情報収集は、驚く程に早く終わった。
クレピカがギルドで一言。
「誰かエルフの里知ってる人いないかな」
とボソッっと呟いた途端。湧くように話が来た。
なんでも、この町はエルフの里と交易をしているらしく、里の位置も1部の人ならよく知っているらしい。
だが、その里はかなり危険な森にあって、里を知っている人は1部の上級者という話だ。
ということで俺らサトシ一行は、その上級者のいるところに足を運んでいた。
「話に聞くと、上級者の人達はかなりの荒くれ集団らしいな。」
「ああ、あのゴロツキどもが怖がっているのは相当なんだろう。」
「あとは絆が強いんだっけ?」
「ああ、1人でもやられると弔い合戦が始まるらしい。」
なかなかかっこよさそうな人達だな。俺たちは固い絆で結ばれたファミリーだ!!って感じなのかな?
それだとヤクザか吉本興業みたいだけど。
お前、テープ回してないやろなあ?
まあ、そんなに時間がかかることも無くついた。
見た目は普通の喫茶店みたいなところだな。
「あれ?ここは。」
ヘレンが首を傾げているので、理由を聞こうとしたのだが、クレピカが先に行ってしまったので慌ててついていく。
「たのもー!!!!」
とんでもない声がけしたぞ。道場破りかお前は。
「あら?この声。もしかして?」
このオネエ口調を聞いた瞬間、俺は身震いして一瞬で逃亡に入ろうとした。
「残念だったわね。逃がさないわよォ!」
振り向いた先には、昨日のあの悪魔がいた。俺は一瞬意識が遠のいた。
「姉さん!!!!」
ヘレンが悪魔をそう呼ぶ。なんだよ。お前の居場所はここにあったのか。バタフリー。
「ちょっと?ペローチカ?ここでは姉さんじゃなくて、ノエルよ?」
「そうでした!ノエル姉!」
マジか。いや、こいつ化け物の仲間入りして、源氏名までできたの?うわあ。流石にえぐ。
てか、ここではって言うのだいたいベッドの上での呼び方があるからじゃん。
もうバタフリーどっか行ってくれやあ。すぐそこにノエルっていうピンクのバタフリーいるじゃん。
お前のすみかはここだよ。サトシだって涙ながらに見送ってくれるさ。
「ノエル姉がエルフのすみか知ってるの?」
「ああ、例のエルフの里に行きたいって言ってたのがペローチカだったのね。そうだけど。無理しちゃダメよ?大体徒歩で3日って所だから、しっかり準備しなきゃ。」
「その点では問題ないよ。うちには運び屋がいるもの。」
「「「「あ、姐様!!!」」」」
「誰が姐様だ!!!あとヘレンまで言うな!!!」
「姐様。お言葉ながら私、ここでの名前はペローチカでございます。なのでヘレンなどという粗野な名前ではなく、ペローチカとお呼びください。」
「いやあなたはヘレ「ペローチカ」」
「だからヘレ「ペローチカ」」
ガチで変わっちゃったじゃん兵「ペローチカ」
「いやお前考えたことすら訂正するなよ!てか俺ヘレ「ペローチカ」なんて言ってねえし。兵「ペロ近」友近みたいにするな!ペローチカを!」
「話戻すよ。そこにいるうるさいやつは、マジックボックス持ちなのよ。だから、準備と言ってもこいつに渡すだけでいいし、徒歩の時間も大幅に短縮できるわ。」
「なるほどね。それは使えそうだわ。そうね。その姐様が行くのに、私達もついてっていいかしら?」
は?
「ノエル姉達も来てくれるんですか!やったー!」
字面だけ読んだら可愛いのかもしれないが、野太い声のやつが無理やり裏声出して喜んでるからな。オネエみんな裏声だからな。カオスだからな。
「絶対反対。俺が死ぬ。」
「なんでついて行こうと思ったの?」
そんなこと聞かなくていいからパパッて場所聞いてすぐ行こうぜ。
「私達もちょうど依頼を受けていて行くところだったのよ。それでその運び屋君がいい仕事するって聞いたから、ちょうどいいかと思ってね。重いのよ。商品って。」
「なるほど。乗った!!!」
「乗るなあああ!!!!!馬鹿なの?俺に死ねって言ってる?アホなの?」
俺はさらに反論しようとした。そう。したんだ。けどさ。オネエたちが怖い目で俺の息子君を見てるんだよね。
「や、やめろよ!」
「貴方が許可しないなら分からな「許可します。」」
という訳で、サトシ一行はロケット団と一緒に行動することになってしまった。
すぐに旅に出た俺らは、オネエにエルフについて聞いていた。
エルフの特徴は、顔がみんなそっくりで、目が大きい。かなりの戦闘好きで、すぐに戦いを申し込むらしい。
寿命が来る直前まで老けず。長い間若さを保っているらしい。あと耳は尖っているそうだ。
思ったより血の気が多いようだ。血の気が多いのは嫌だなあ。穏便に愛でて終わりたい。
「あとね。とってもお盛んよ。」
一気に氷ついた。いや、俺とクレピカだけ。もうヘレ「ペローチカ」は手遅れだ。
「そういう意味でも対応できる私たちしかできないよの、この交易では。」
マジか。こいつら対抗じゃなくて対応っていいやがったよ。その気満々で行くのか。だからそんなに厚化粧なのか。
おい。ヘレン。お前まで目を輝かせるな。
ちなみに、現在ヘレンも女装中だ。俺びっくり。
俺も化粧をされそうになったが、ナイフを振り回しながら逃げ切った。
クレピカが爆笑していたのを見て一瞬殺意が沸いた。
今日は森に入らず、森の手前で野宿だそうだ。本当に怖い。異世界飛んできたことよりこの1泊がいちばん怖い。
俺は異世界のテントを3つ出して、皆にそれぞれの荷物を配った。
昼はパンだけで済ませたので、お肉が欲しいなあ。
だが、ここには焼肉のタレも胡椒もない。
異世界で調味料は高級ってマジなんだね。お肉はお塩だけってそんなん悲しいわ。
日本の真っ白な塩に慣れた俺からしたらこの茶色とか黒の塩も塩とはあまり言えないが。
てことで今日は人数も多いし鳥の丸焼きです。ニワトリみたいな空飛ぶ鳥がいて、意外と美味しいのでそれを撃ち落として焼きます。
1年間無駄に森に潜っていた訳ではなく、レモンみたいな酸っぱさを持つ果物や、山菜みたいなものも採取している。
だから別に飽きるって訳でもないが、日本食の好きだった俺は結構ご飯だけは物足りなく感じる。
「これだけで十分よ。今までに比べたら。」
達観した目で話すというか脳内に語りかけてくるクレピカ。
「ドワーフはね。本当に酒好きなの。少なくとも、産まれたての赤ん坊にお酒飲ませるくらいには。地獄よ。赤ん坊がお酒飲むと、喉が焼けるように痛いの。地獄の時間よ。あれは。」
「鬼か。ドワーフって小鬼だっけ?」
「誰がゴブリンじゃ。ドワーフがお酒を飲むのはゼロ歳からよ。お肉はただ焼いた肉で、野菜なんて食べない。そこかしろに脚気が充満してたわ。」
地獄だな。大丈夫か?それ。
「魔力で補ってるようなものよ。人間だったら50歳で死ぬわね。」
「人間五十年織田信長かい。」
「私は藤吉郎派よ」
どんな好みの違いだよ。俺も織田信長好きなわけじゃねえよ。あんなうつけやだわ。俺楠木正成派。
「織田信長って誰のことだ?」
いきなり後ろから声が聞こえて振り返ったら、メイクの落としたペローチカ、じゃねえや、ヘレンがいた。
「ヘレ「ペローチカだ」」
まだやるんかい。
「織田信長って言うのは昔俺の住んでいた国で馬鹿だアホだと言われ続けながらも頑張ってた矢先、家臣に殺された哀れな人だよ。」
「ちょっと違うわ。訂正すると猿とかハゲとか言うあだ名を家臣につけて家臣はその腹いせで殺したのよ。」
猿はよく聞くけど、殺してなくね?ハゲの本能寺の変だけじゃね?
「そんなことで殺すとは。血の気の多い人達なのだな。」
「いや、確かに血の気も多いけど 、それよりプライドの方が何倍も高いぞ?問題を起こしたら切腹。戦争に負けたら切腹。何かあったら切腹。頭髪は1箇所の纏めて前方から見るとすっごく情けない髪型してる。織田信長だけじゃなくて、そいつの所属してる侍は皆。」
「横から見ても情けない。」
「つまり情けないが、何かあったら腹を切るようなやつが織田信長及び侍なんだな。」
「「そう。」」
「いいのか?侍はそんな感じで?」
「大昔はそいつしかいなかったから。俺の故郷。」
「滅ぶなそんなん。」
和やかに話してると後ろから化け物の気配。
「侍っていう人達のこと話してるの?聞いた事あるわよ?」
「まさかのノエル姉転生してた?」
こいつが転生だとして、もし女の子の心で怪物の体を持った悲しいキメラだとするなら、全て辻褄が合う。
こいつも悲しい運命に悩まされたやつなんだな。
「昔、色んな所で道場破りをしていたころにね。」
古風な喧嘩の売り方。いや、まあ、こんな奴が日本出身よりはマシだけど。
「ある剣術の道場に挑んだ時にことごとく惨敗して、その時そこの師範代が「また、つまらぬものを切ってしまった。」って言ったのよ。それで、何そのセリフって私が笑ったら、「世界一有名な侍のセリフだ馬鹿野郎!!!!」っていきなり怒鳴ってきたのよ。」
なるほど。そいつ確実に日本人だわ。いや、石川五エ門じゃん。怒鳴ったのは恥ずかしかったのかな。でもいきなりでもねえよ。
お前道場破りだし。
「納得がいかないわ。」
「何がだ?」
「世界一の侍はロロノア・ゾロよ。」
そっち?確かにゾロは良い奴だけど、あいつ後半活躍してないから、GOLDでは金になって終了だったじゃん。あんだけ衣装かっこよかったのに。
初めの方めっちゃかっこよかったよ。すげえ良かったよ。でも今スナッチだから。あいつの活躍の場スナッチだから。
「五エ門なんてこんにゃく切れないじゃない。」
「ゾロだってタコの足切れねえよ。」
いや俺別に五エ門ファンじゃないわ。なんで張り合った?
俺ミホーク派だったわ。
「ミホークなんてゾロの踏み台にするために作られたお粗末な世界一じゃない。それよりかはまだシャンクスの方がマシね。」
確かにそうだが、そこにロマンを感じるんだよ俺は。
ほら、タバコ吸いながら主人公を助けるおじさんキャラとかくそかっこよくない?忍野メメなんだけど。完全に。
「そんなことより、やっぱりいたわね。私たち以外にも日本人。」
この世界居すぎじゃない?
俺の希少価値よ。
「そういえば。俺みたいな召喚者はどれくらいいるの?」
あの感じからして召喚は何回も繰り返されている。それの頻度は分からないけど、少なくとも召喚酔いなんてものができるほど召喚例はあるみたいだ。
それか、数少ない1人がデュエマを始めたか。
俺の知ってる召喚酔いって単語出るのあれくらいだし。
「国王が変わった時に7人、クリスタルを持たせて旅に出させるわ。」
いや多くね。それだけいたら俺も会いそうじゃない?他の日本人と。
「旅に出すまで凄く早かったでしょう。日本人が結託して反抗するのを防ぐためよ。まあ、あなたほど従順な人はいなかったけど。」
なるほどなあ。日本の行方不明者ってこれの割合も大きい気がする。拉致やん。北朝鮮よりタチ悪い。
「いやいや、流石にいるだろ。俺より犬みたいなやつ。」
「いないわよ。なんにも言わずすぐに従順なわんちゃんになったのなんてあなたくらいよ。あ、あと公開脱糞したのもあなたくらいよ。」
「流石に1人くらいはいるだろ。世の中のこの瞬間に何人トイレ行ってると思ってるんだ。確率は高いだろ。」
流石に腹痛くて公開脱糞したやつはいないかもしれないけど、トイレ中に呼び出されたのはあるだろ。いや、
「召喚って無作為に選んでいるのか?」
「それが完全な無作為という訳ではないのよ。雷は高い所に落ちるでしょう?それと同じように、異世界から呼び出すのは難しいのよ。だから、強いエネルギーに狙いを搾って召喚するのよ。そのエネルギーが1番大きくなるのが、俗に言う死ぬ間際走馬灯の時間なんだけど。」
あー理解。よくある走馬灯の終わりにあれ?ここは?ってなるやつはそうなってるのね。
ちょい待て。
「つまりうんこしてる時に召喚された俺は、あの時臨死体験したのか?」
「多分。そういうことになるわね。」
......
あっぶねえええええええ!!!!!!!
もう少しで死因が腹痛による下痢になるところだったのか?
ナイス!異世界ナイス!王様ナイス!
よかったあ。異世界召喚されて。
「というわけで、あなたのような人はいないの。わかった?」
大いに理解致しました。召喚されて誠に助かりました。
あれ?でも原因がうんこにある俺は召喚されても死ぬ気がするけど?
まあ、今生きてるしいいか。
「ねえ、2人とも、私たちのこと忘れてない?」
完全にこの化け物のこと忘れてたわ。夜だなもう。さっさと寝よう。
「あら、1人になんてさせないわよ?一緒に寝ましょ?」
と言って化け物はがっしりと肩を掴んできた。
「いえいえ全然大丈夫なんで、もう1人で寝れる年齢なんで。子守唄なくてもぐっすり寝れるので。」
「遠慮しなくていいわぁ。私たちが子守唄歌ってあげるから。」
「それ絶対眠れませんから。自前の子守唄あるんでいいです。」
「こっちの方がぐっすり眠れると思うけど?」
「それぐっすりはぐっすりでも永眠ですから、二度と起きないから。おい!助けてくれ!クレピカ!」
「.........」
「おい?嘘だろ?同郷のよしみだろ?助けてくれよぉ!!!!」
「.........」
「あら、それなら姐さんも来ます?」
「いっぱい可愛がってもらいな。」
「おめえぜってえ許さねえからなクレヨンし○ちゃんがああああああああぁぁぁ!!!!!!」
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