キュルケとの出会い⑥

「Fランクがこんなとこになんの用だよ!」


 ドンッと、背中から地面に突き落とされる。草が生茂る柔らかいところで助かった。


「てめえのための薬草はこっちにはねえ! ルールを守れ! Fランクの雑魚が!」

「ぐっ……」


 横たわる俺を蹴り上げて仲間と共に戻って行くDランクの冒険者たち。

 彼らにとって俺は壊れない程度に殴っていいおもちゃだった。


「くそ……勝手に決めたルールで好き勝手言ってくれる……」


 流れた血を拭って薬草を当てる。

 テイムのついでと思って取っておいたはいいものの、あいつらにぐちゃぐちゃにされて納品できなくなってしまったものだった。


「あいつらが調子に乗れるのも今日までだ……」


 そう。俺は今日生まれ変わるんだ。

 テイマーの指南書。貴族でもない限り師匠や指南書なんてないのが普通だ。俺は恵まれてる。

 さっきのやつらより間違いなく、恵まれているはずだった。


「今日から俺はテイマー。やり方は覚えた……あとは、やるだけだ」


 自分より強い魔物と一緒に戦う、俺みたいに力もスキルもない冒険者の最後の希望。

 最初は弱い魔物だとしても、一気に見返すことができると、そう思っていた。



 だが、現実はそんなに甘くはなかった。


「こんなに難しいのか……」


 結局テイムに必要なものは、テイムしたい魔物にどうメリットを感じさせるかに尽きる。

 コツが分かっていたところで、向こうにとって俺という存在が意味があるだけの強さや頼りがいがない限り従ってくれない。

 そのことを身を持って学んだ。


「普段周りの冒険者が結構加減してくれてたのがわかるな……」


 いらぬ感謝を覚えることになってしまった。いやいやそれはおかしいだろう。

 だがそんな考えが頭をよぎる程度には、野生の生き物は苛烈で手加減なしだった。


「なんなら死にかけたしな……」


 やけくそでゴブリンまで手を出してこの始末だ。

 あとはもうスライムくらいしか可能性もないんじゃないだろうか……。


「まあでも、最初の一匹との関係値がテイマーとしての素質を伸ばすって書いてたからな……」


 たとえ最弱で何の役にも立たないスライムだとしても、ないよりはいいんだろう。


「まあ、テイムして、仲良くなったと思ったらリリースすればいいだろ」


 テイマーのキャパシティのことを考えればいつまでもスライムに力を割くわけにもいかないはずだ。


「でもまずはスライムから、俺のテイマーの第一歩をスタートさせよう!」

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