キュルケとの出会い⑤
「よし。とにかくまずは一匹をテイムすることが必要らしい」
本の内容をまとめると結局そういうことになる。
テイムの試行回数を増やそうにも、本人のキャパシティがあるらしいから難しい。それより、とにかく最初の一匹とどれだけ心を通わせ、信頼関係を築き上げられるかに注力したほうが良いと、そう書いてある。
「この近辺で強くて、テイムできそうな魔物か……」
当然あまりに実力差があればテイムうんぬん以前に殺されるだろう。
さっきのミノタウロスのようなわけのわからない情報に生命をかけるのはまだためらわれる。
「じゃあ……せめて飛んでるやつだとかっこいいだろうか?」
鳥型の魔物、飛翔能力を持つ魔物を図鑑になったページと照らし合わせながら吟味する。
鳥型の魔物は卵を取ってくるのが一番いいらしい。どうやら卵から孵った瞬間に見たものを親と認識する特性がある魔物が多いようで、普通の魔物よりも信頼関係が築きやすいとか。
ただこの方法は二つ、問題があった。
一つは卵から孵化したばかりの幼体をテイムしても、戦力にならないということ。むしろしばらくはつきっきりで面倒を見ないと死んでしまうようなものも多い。そんなことをしていたら俺のほうが死んでしまう可能性すらある。
蓄えもなく、日銭を稼ぐ行動はとらないといけないからな……。
そしてもう一つ、こちらのほうが大きな問題だが……。
「そもそも親鳥に勝てるわけがない……」
鳥型の魔物は飛翔系のスキル持ちや魔法使いでもなければ互角に戦うのが難しいとされる相手だ。
Fランクの俺が単身で卵を盗みに行けば、たちまち親鳥たちの貴重な栄養源にされてしまうだろう。
「というわけで鳥は諦めると……」
オークやゴブリンは辞めたほうがいいだろう。いやそもそもオークなんか出会ったら死ぬけど……。
見た目がきついやつは仲間にしたあとが困る。
隠れられるようなやつらでもないから街に入れなくなってしまうし、森では冒険者に間違って狙われても文句もいいづらい。
「じゃあ……まあいいか。魔物じゃなくても丁度いい獣とか、行けばいるかも知れないし!」
とにかく早く実践したい気持ちが強かった。
テイムの手法だけは入念に確認してから立ち上がる。
紙はこの場所に置いていくことにした。もらっていいものかもわからないし、俺が持っていて誰かの手に渡るのは避けたい。
ギリギリまでテイマーになることは隠しておきたいしな。
「よし! なんか良いのがいますように!」
意気込んで洞窟をあとにした。
まだ見ぬ相棒を求めて、期待に胸を膨らませて洞窟を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます