キュルケとの出会い③
「これ……スキルの指南書!?」
スキル。
種族の限界を超えた力の総称であり、これを一つ身につけただけで職に困らないと言ってもいいほどの価値を持つものだ。
スキルがなくても冒険者にはなれるが、上位の冒険者なら必ずと行っていいほど、貴重で強力なスキルを身に着けている。
それはパーティーにおける役割ごとの適性であったり、武器の適性であったり、その他、人の身でありながら空を飛んだり、とんでもないスピードで動いたり、瞬間移動をしたり。
魔法では説明できない固有の特別な能力をスキルと呼んでいた。
「スキルがあれば……!」
俺だっていつまでも│Fランク(最底辺)でくすぶる必要がなくなるはずだ!
期待に胸を膨らませて読みすすめる。指南書なんて市場には出回ることなどないし、出てきたとしたらバカみたいな金額がつくはず……! 俺が身につけられなくてもこれで人生、変わったかもしれない!
そう、本気で期待していた。
だがこれは、そうじゃなかった。
「よりにもよってテイム……」
テイム。数ある職種系統スキルの中でも、最悪のスキルだった。
劣等職といえばテイマー。テイマーと言えば劣等職。
テイムの特徴を要約すれば、野生にいる魔物を従えて戦わせることが出来るという一見便利そうなスキルではある。中にはドラゴンをテイムして活躍した英雄もいたはずだ。
だが、フレーメルでテイマーとして活動していくのは厳しいと言わざるを得ない。理由はいくつかあるが、そもそも魔物を従えている人間は危険視されるし、従えた魔物が強くても本人は弱いから安全マージンも取りにくい。
つまり、冒険者としてのし上がっていくために必要なパーティーを組むということを、諦めざるを得なくなるわけだ。
「とはいえ、今もパーティーが組めてるわけじゃないけど……」
今はFランクという駆け出しだ。特別役割分担をするほどの作業は発生しないし、そもそもパーティーを組むメリットより取り分が減るデメリットが大きいので組んでいなかった。
それでも、将来パーティーを組むことを諦めていたわけではない。
「この洞窟は……何回人を落胆させれば気が済むんだ……」
しかもページが飛びすぎていて断片的な情報しか得られない。
これではとてもじゃないが価値があるとは言えないし、これをスキル指南書だと言い張って売っても偽物だと言われて買い手はつかないだろう……。
「でも……」
ふと思い直す。
「色々なことを諦めて、テイマーを目指したら?」
どうだろうか。
いまだって低ランクというだけで日々の稼ぎもままならない状況なんだ。
武器も買えない。スクロールも買えない。
Fランクの依頼をほそぼそとこなしていくだけではいつまで経ってもランクが上がる兆しも見えない。
「スキルを使って、戦えれば……俺もCランクくらい目指せるんじゃ……?」
Cランクは冒険者にとって一つの到達点になる。
その稼ぎだけで一生生活ができるランクが、Cランクだから。
俺のようなぎりぎり死なないだけの生活ではない。しっかりとした稼ぎを持って、家庭をもつことだってできるような、そんなランク。
「Cランクになれるなら……」
天秤にかける。
冒険者として一人前と言われるCランクを目指していくために、テイマーとしてバカにされたり、気味悪がられたり、ソロプレイヤーとしてやっていくことをいまここで決意できるかどうか。
判断は一瞬だった。
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