キュルケとの出会い②

「よし。行くか」


 人気ひとけのない山道。続いている道の半分は自分で作ったといってもいい獣道を今日も進む。

 もちろん採取にも狩りにもお世辞にも効率が良いとは言えないルートだが、それでも途中で他の冒険者に絡まれるよりはマシだ。


「ん?」


 いつもどおり進んできたはずだった。

 それでも目印のない山道はどこかで方向がずれるものなんだろう。

 たまたま目に入った土の盛り上がり。なぜか引き寄せられるようにその場所に足を進めていた。


「これは……洞窟?」


 中の様子はよくわからないが、少し先に進めそうだ。


「松明がいるか……もったいないけど……これが遺跡ならそれだけで今の生活が一変する……!」


 遺跡やダンジョンの第一発見者になればこれまでの生活からは考えられなかった莫大な報酬が手に入るはずだ。それこそ、誰かに奪われる心配をしなくても済むような護衛を雇ったりもできるだろう。


「行こう……」


 意を決して乗り込むことにした。

 なけなしの松明に火をつけ、消えないうちに奥に潜り込む。

 中は狭い通路になっているようだ。


「一本道だな……?」


 壁に手を添えながら歩く。

 自然のものではなさそうな加工された壁に囲まれた一本道。周囲は汚れているようではあったが、行き止まることもなくずんずん奥に入っていける。


「あそこで行き止まり……か?」


 ほとんど一本道が続いただけで終わってしまったので少し拍子抜けする。

 これでは莫大な報酬も期待できそうになかった。


「ま、そんな簡単に人生変わらないよな……」


 そう言って引き返そうとしたとき、洞窟の奥に違和感を感じた。


「ん?」


 地面が見えるよう松明の明かりを下まで持っていくと、大量の紙が散乱しているのを見つけた。


「これは……?」


 松明を適当に脇に置きそちらに注意を移した。

 もしこれが価値のあるなにかなら、諦めかけた一発逆転の可能性もまた沸き起こる。


「頼むぞ!」


 祈るように拾い上げたそれを眺める。


「んー……」


 内容は……端的に言えばエロ本だった。


「なんでこんなもんこんなとこに置いてたんだよ!」


 拍子抜けどころの話ではなかった。


「くそ……散々期待させて……ん?」


 それとは別に、なにかの紙が落ちているのを見つける。

 紙の右下によくわからない星型の紋章のようなものが書いてある読み物だ。


「こっちは……なんかごちゃごちゃしてて読めないな……」


 星の模様のある紙だけをエロ本の中から拾い上げていく。

 本当に俺は何をしているんだろうか……。いや冷静になったら負けだ。これが何かにつながるかもしれないのだから。

 大方集め終えて、改めて目を通す。

 ページ数もわからないその書物は読めるものと読めないものがあったが、それでも俺を興奮させるには十分すぎる情報を記載していた。


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