100 成功

 生気のないアオイだが、その第一声は意外にも元気なものだった。


「うまくいったようですな!」

「え……いや、目が」


 様子がおかしいのはどうも目だけらしい。

 と思ったらアオイにとってそれすらも些細な問題だったようだ。


「ああ……この程度は元々どうとでもなることですゆえ……ほら」


 そう言うとアオイの目が赤く光り、ドラゴン特有の縦長の黒目が覗く獰猛なものになる。

 かと思えば一転、人間らしい輝きがもどってくる。


 その姿は溶け切る前のアオイそのものだった。


「ひとまず成功だな」

「すごいですね……。アオイの力がこの一瞬で何倍にも膨れ上がったようです」


 リリィが驚愕していた。


「ずるーい。リントくん、私もあとでお願いね!」

「いや、危ないって言ってただろうに……」


 ただもうビレナは止められないだろうことはわかっていた。

 遠くない未来にそうなるんだろうな……。


「ふむふむ……なるほど……精霊というのは面白いですな。こんなことができるとは」

「ええ……」


 アオイは自分の腕を取ったり伸ばしたりして実験し始める。

 カゲロウの炎のような不定形のなにかが伸び縮みしている状態だ。カゲロウと違うのはそれの色が青緑に輝いていることくらいだろうか。


「カゲロウの憑依を一度解き、あとはアオイと合わせよ」

「合わせる、か」


 そうこうしているうちに森から大きなエネルギーが溢れ出るのを感じた。


「私ちょっといってくるよー!」

「ご主人さま、私も先にいきます」


 ビレナとリリィが飛び出していく。

 リリィが抱えていたバロンはティエラに預けたらしい。

 ティエラだけはやはり、表情に絶望を浮かべたままだ。


「ティエラ……?」

「いくら強くなっても……グランドエルフは半神とまで言われる脅威よ……私は……とんでもないことにみんなを巻き込んでしまったわ……」

「なるほど。それを気にしてたのか」


 ティエラの割に弱気だと思っていたが、気にするところは仲間の心配だったようだ。


「大丈夫。ティエラのせいじゃないし、俺がなんとかする」

「ほう。ご主人にしては珍しくやる気だな」


 ここまでビレナに引っ張られるように動いてきただけだったが、仲間ティエラにこんな顔をさせたままでいたいとは思えない。

 ビレナたちがいてもなおこれだけの絶望を浮かべているのなら……。

 そしてベルが、俺にならできるというのなら、俺が頑張るしかないだろう。

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