龍王
「取り乱しました……」
ポニテ少女が正座をしている。
「いや別に気にしてないんだけど……テイムか」
「はい！ 私はどうしても強くならねばなりませぬ！」
「えっと……一応聞くけどテイムが何かはわかってるのか？」
「はぁ……魔物を従え、従った魔物が強くなる、と」
なるほど。最低限はわかっているらしい。
「旦那様の心配事も多分、この子はわかった上で言っていますよ」
ティエラが出てきてそう告げた。
「ていむされればどうなるか、なんとはなしには聞いております」
「その上で、この子は自分ならなんとかなると思っているわね」
「そそそそのようなことはっ！」
わかりやすい子だった。
「にゃはは。まあ良いんじゃない？ 本人がそう言うならしちゃっても」
「ふむ……ご主人の力に勝てるものなどそれこそ、そこの邪龍でも連れてこん限り難しいだろうからな」
「そもそも強くなったとしても敵意はないでしょうし、いいのではないですか？」
まあそうなんだよな。
目の前の少女に敵意や害意は感じない。
「それはもちろんでございます！ 恩ある御仁に無礼はいたしませぬ！」
「どう思う？ バロン」
「私か！？ 私はまあ、そう言うなら気にせんでもいいように思う。というよりあれだ。このメンバーを前に騙し討ちなどして無事に生きて帰れるような生き物など知らん」
なるほどそれは一理ある。
フルメンバーだからな。
「まあいいか」
「む……？ まさかとは思うがここにおられる方々はみな、リント殿が……？」
「テイム、してるな」
「左様でしたか！ であれば皆何かしら、変化へんげでもしておるのでしょうか？」
「変化へんげ？ なんでだ」
「はて……ていむ、とは魔物相手にしか使えぬと聞いておったゆえ……」
なるほどな。
まあそうだよな。普通はそう……いや待て。
ならなんでこの子は自分がテイムをされることを前提に話していたんだ……？
変化へんげってまさか？
「申し遅れました。私は東方、火国から来たアオイと申します。わけあっていまはこのような身体をしておりますが、火国の伝承通り、中身は龍でございます」
「龍！？」
「左様。そしてそこに封印された邪龍もまた、火国のものなれば……私の目的はひとえに、そのものを討ち滅ぼすことでございます」
一気に情報が流れすぎた。
つまりどういうことだ！？
「そうですね……ようはこの子は龍で、あの邪龍とも親戚かなにかなのでは？」
さすがリリィ先生。
「火国では皇族一族と我々龍の間に一つ、盟約があるのです」
「盟約……？」
「はい。皇族一族は絶えず、龍の血を入れる。その代わり我ら龍族は一族をあげ、その子々孫々にいたるまでの繁栄を約束するものにございます」
「龍と……」
龍と竜は異なる生き物だ。
竜はトカゲに羽が生えた程度。その知能も高くても亜人には遠く及ばない、賢い魔物の域を出ない。
だが龍は神話にもでてくる神代の生命であり、人間よりも高位の次元に存在するとすら言われる、いわば伝説の生き物だった。
「あやつは一族の恥。討伐は一族の望みでございます」
なるほど。
話がつながる。
「たしかに龍相手だとどこまでコントロールできるかはわからないな」
「いや……ベルを見ればわかるだろう……リント殿なら関係ない」
「ま、そう思うよー」
「そうでしょうね」
「そうだな」
「そうね」
バロンが呆れながらそう伝えてくると、すぐさま全員が同意していた。
俺を何だと思ってるんだろう？
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