鍛える
「強くなろー!」
「おー?」
なぜか邪龍の巣に連れてこられていた。
あれ? 先にエルフじゃなかったのか?
「邪龍本体はともかく、ここは確かにちょうどいい相手は多いかもしれませんね」
「うんうん。だいぶよくなったけど、リントくんがカゲロウちゃんとうまく連携できると楽だしねー!」
「まあそれはそうか」
なんだかんだなんちゃって精霊憑依のままここまで来た。カゲロウが合わせてくれるおかげでなんとかなっていたが、そろそろこちらがしっかりする必要があるだろう。
「まずはそうだなぁ……いきなりダンジョンだともしもの時があるから……バロンに安定して勝てるようになれば大丈夫な気がするよ?」
「ということで、呼び出しちゃいましょう」
「いいのか? こんなんで呼び出して」
「にゃはは。むしろそろそろ寂しがってソワソワしてるかもよー?」
というわけでバロンとベルに呼びかけを行った。
一瞬でバロンたちが姿を表す。
「何かあったか?!」
「んや、リントくんの修行に付き合って欲しくてね」
「なるほど。良かろう!」
出てきたバロンは書類仕事をしていたはずなのになぜかフル装備でノリノリだった。
「なんかテンション高いな?」
「ご主人になかなか呼ばれんから悶々としておったからな、あやつは」
「まじでそんなことになってたのか……」
可愛いところがあるなぁと思った。
「それはそうと、何か変わりはあったか?」
「そうですね。ご主人様の後宮を作ることになりました。第一弾としてカルメル騎士爵の娘を引き受けます」
「そうか、後宮か……は?」
「リントくんのハーレムだねー!」
「ちょちょちょっと待て!? お前らはそれでいいのか?!」
慌てふためくバロン。
「ふふ。考えてみてください」
「何をだ……?」
「後宮が出来てご主人様のお相手が増えたとして、何か変わることがありますか?」
リリィの問いかけに一瞬考えるそぶりをしたバロンが即答する。
「ないな」
「でしょう? どうせご主人様なんですから、女の子は増えるんです」
「それは確かに」
「俺、そういう認識だったの……?」
俺の言葉は誰にも聞こえていないように話が進んでいく。
「その点、貴族王族の娘を横並びには出来ませんし、させる気もない。となるとパーティーメンバーの私たちが優位に立つには、後宮に押し留めておくのがちょうどいいのです」
「相変わらずだな腹黒聖女」
「何か言いましたか? ベル」
「やめよ! 聖気をちらつかせるな! お主のはシャレにならんのだ」
悪魔と聖女がこんなやりとりしてるのって、歴史上で見ても異例な気がするな。
「ま、とにかくリントくんに強くなってもらわなきゃだから、まずはバロンをボコボコにできるようになってもらいます」
「ふん。甘く見るなよ? 私とて何もしていないわけじゃないんだ」
「そうだな。こやつは闇魔法の書もほとんどの部分を習得し、強さはお主らと離れる前の比ではないぞ?」
「まじかよ……」
バロンだってもともとSランク超級だぞ? どこまで強くなるんだよ……。
「ふふ。リントくんだって強くなってるもんね?」
「いや俺何もしてないぞ?」
「大丈夫ですよ。ご主人様の精霊憑依は確実にレベルも上がってますし」
「そうなの?」
どうやら一緒にいるだけでもそれなりの効果はあるらしい。カゲロウもキュククと鳴いて擦り寄ってきていた。
「とにかく一度やってみましょうか」
「ああ……カゲロウ」
「キュクゥゥウウウウ!」
「キュルケも頼むぞ」
「きゅっ!」
バロンがフルフェイスの鎧を身に纏う。金属の隙間に黒いモヤがみえる。闇魔法だ。
「へえ……これだと確かに隙間から攻撃できないねえ」
「俺唯一の勝ち筋だったんじゃないのか……?」
「大丈夫大丈夫。全身が硬い敵の倒し方は簡単だよ?」
「簡単……?」
「隙間狙ったりする必要ないからね! 全力で殴る! それだけ!」
ウキウキ顔のビレナに見えない筈のバロンの表情が引きつるのが見えた気がした。
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