明日のために

「にしても、フレーメル周辺だけ軍事力がおかしなことにならないか……?」


 フレーメルの自宅に帰って一息ついたところでそう問いかける。

 ちなみにルミさんは色々準備もあるだろうということでおいてきた。


「なるにしても軍ではありませんから」

「それを問題視したとしても、国王が何かしてくることはないだろうしねー」

「あるとすれば王子の誰かあたりが勢い余って、くらいかしら?」


 あり得るならなんとかしとかなきゃだなぁ。

 まあ先のことはおいおい考えるとしよう。


「とりあえずガザの老婆を説得しなきゃなのか」

「ほとんど問題はないはずですけどね」

「そうなのか?」

「あえばわかります」

「そうか」


 リリィがそう言うならまあ、いいか。


「鑑定の費用を受け入れる住人分ってのも……ちょっと想像できない額だけどな」


 そもそも一人が頼んでも安い馬車くらい買える値段だしな……


「私たち個人の資金はともかく、これからこうした費用が発生する部分については早めに手を打ちたいですね」

「ダンジョンを早く整備したいわね」


 邪龍の巣をダンジョン化するためには邪龍を封印しておくか、倒した上でエネルギー源を与える必要があるらしい。


「テイムできたら楽なのだけど」

「神話級の相手にそれは……」

「まぁ、これも倒してから考えましょう。まずはエルフの方ですしね」

「そうね。こっちの問題を整えたら、いよいよかしら?」

「はい」


 エルフの里。王国元ビハイド領と神国をつなぐ森のどこかでつながっているというが具体的な場所はわかっていない。

 ただどうせ開拓するから森は焼き払った方が楽とか言ってた……本当にいいのか?


「必要なものは可能な限り運び出すから。木はそこにやどる精霊に働きかければ移動できる。老人会を倒せればそれだけで大丈夫よ」

「そうか……」


 そんな話をしているとバタバタとビレナが帰ってきた。


「晩ご飯とってきたー!」

「ふふ。ご飯にしましょうか」

「そうね」


 今日は一旦お開きとなった。


 このときの俺はまだ知らなかった。

 次の日、地獄のような特訓が始まることを。


 ハーレムの話とかちょっと楽しみだなとか、のんきに構えていられたのはいまだけだった。

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