方針

「私達はエルフの里と邪龍をなんとかしないといけないんですが、後宮の話も出たので先にそちらの話を進めてもいいかもしれません」

「私はちょっと出かけてくるねー!」


 面倒な話だと感じたらしいビレナは一瞬で姿を消した。

 まあ面白そうな話だったりビレナが必要なタイミングになればすぐ姿を現すのでいいとしよう。


「ビハイド家管轄の地域の再生、だったかな?」

「その辺りはカルメルの調査によるとこの地域の小さい貴族がそれなりにやっているそうなので、困ったら助けるくらいで問題有りません」


 むしろいまビレナが解き放たれたことで助かる地域も多いという。

 自警団がいなくなり魔物の被害に悩む村が多いらしいからな。


「私達は自分たちの領土と、神国側の再建を同時に進めればいいだけです」

「自分たちの領土……?」

「どうせなら神国とフレーメルにまたがる森すべてを開拓して、リント領にしてしまおうかと」

「まじか……」


 だいぶ桁違いな話になるな……。


「王国側の被害は少なかったですが、御存知の通り神国側は被害が甚大です。もはや住めなくなった土地も多くありますから、移住者の受け入れと、開拓に関連する仕事を与えてこの周囲を一気にこの地方の都市として開発してしまおうかと」

「いいわね。神国側との連絡口になるなら人の行き来は問題ないでしょうし」

「問題は王国民と神国民の考え方の違いですが、これは力技でなんとかなります。神の使いと天使がいますからね」


 神国の人間にとっては神がすべてであり、信仰が魔法の源。実際に国民の殆どがCランク相当の魔法使いとなると、王国民にとってその存在は脅威になる。

 神国民にとっては野蛮で信仰の足りない王国民というレッテルが貼られ、争いは避けられないように思えた。


「学校を作ります」

「学校?」

「はい。そもそも全員がCランク相当の戦力になってしまえば、争いは起こりません」

「そんなことできるのか……?」

「Cランクまでであれば、本人の資質や特性に左右されず、正しい道に導けばなんとかなるんですよ」

「そうなのか……」


 自分のことをおもいかえすとそう簡単には思えないんだが……。


「鑑定士を雇って、その人がCランクになるための適正職業を予め伝えます」

「え……?」


 確かにそれならCランクまでは到達するだろう。実際に貴族の子どもはなんらかの分野においてそれに相当するところまでは少なくとも駆け上がれることはしっていた。

 だが……。


「そんな優秀な鑑定士を抱え込めるのか……?」

「出来るじゃないですか。この地域に一人、優秀な占い師がいるでしょう?」

「ガザの老婆か!」


 ガザの老婆。ガザ地域の村や街を転々とする老婆であり、占いの的中率は恐ろしいほどだという。


「鑑定までできるのか……?」

「逆です。鑑定のスキルが特別際立っているからこそ、占いとして言い当てられるんですよ」

「そういうことか……」


 確かに上位の鑑定士は未来を見通すとも言われていたからな……。


「というわけで、やることは増えますがまぁ、少しずつ進めましょう」

「そのうち私たちエルフも移住してくるかもね」

「すごい街になりそうだな……」


 もうなるようにしかならないだろうし楽しむことにしよう。

 それより先に、俺はカゲロウとの連携を深めてハイエルフ対策もしないといけないしな。

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