ハーレム

「良いじゃん! 楽しそうで」

「楽しそう……か?」


 提案に真っ先に乗っかったのはビレナだった。


「ビレナ、この形でこの子を受け入れたら、私達愛人よ?」

「今後増えることを考えても少し考えないといけない部分が大きいです」

「でも、リントくんの味方が増えて、リントくんの子どもが活躍するんでしょ? 楽しいんじゃない?」

「私達に味方も子どもも、足かせにしかならないように思うのですが……」


 ティエラ、ビレナ、リリィが三人で話し込み始めてしまった。

 当人である二人を置いてけぼりにして。


「政略結婚か……」

「あの……リントさんはその……私が、えっと……妻になることについてはどのように思って……」


 もじもじと、視線をチラチラとこちらに向けながら聞いてくるルミさん。

 可愛い。


「ルミさんと結婚するのは別に何も問題はないんだけどね」

「ないんですかっ!?」


 むしろ問題になるのはギルドのほうだろう。

 看板娘のルミさんが奪われるのは冒険者たちにとって大きな損失だ。それだけでひと悶着ある気がする。


「その……リントさんが良いのなら私は……」

「決まりました」


 ルミさんがなにかいい出したところで遮るようにリリィが声を上げた。

 三人が自信満々にこちらに顔を向ける。

 嫌な予感がする。ビレナがその顔をしてるときにいいアイデアが生まれた記憶がない。


「フレーメルの開拓を進めて、ご主人さま専用のハーレムの街をつくりましょう」

「本気で言ってる……?」

「もちろん!」


 政略結婚の話がどうして街づくりに発展してしまったんだ……。


「そもそも国王が直々に娘を送り出すとまで言ってるのですから、いずれにせよ何かしらの準備は必要でした」

「普通に結婚すれば良かったんじゃないのか……」

「すでにこれだけの女性に囲まれたご主人さまを見て、なんとも思わずトラブルも起こさないタイプの子ばかりではないんです」

「なるほど……」


 とりあえずルミさんを受け入れるのも王女を迎え入れるのも、貴族用の受け入れは序列をつけて厳密に管理することが必要とのことだった。


「ご主人さまは後宮の序列に応じて寵愛を授ける回数もコントロールしてもらいます」

「寵愛……?」

「偉い人にいっぱいエッチなことしてあげてねってこと!」


 思わず飲んでたお茶を吹き出した。

 そんな感じなのか……⁉

 というかこれ、仮にも娘を嫁に送ろうとしている父親の前で話すことか!?


「がははは。そこまで考えてるなら安心じゃねえか。ルミも変なゴタゴタに巻き込まれねえで済む」

「そうですね。ルミさんは第一号として優遇しますし、もう一つ、いい話もあります」

「いい話?」


 カルメルもルミさんも興味を持ってリリィの方に身体を向けた。


「私達の扱いですが、後宮ではなくご主人さまのパートナー、というよりテイムされているので従魔なんですよね」

「ほう? その噂、本当だったんだな」

「噂になってたのか……」


 あまりどういう風に広まってるか聞きたくないなあ……。


「従魔と後宮は同列に扱いません。パートナーとなった人間は政治的要因に左右されず、有る種特別扱い、一方で後宮から見れば従魔になったものは世継ぎ争いからの脱落を意味します」

「なるほどな。プライドの高い上級貴族の娘たちは後宮での序列争いに熱心になって、その間にあんたらが何をしてても気にしなくなるってわけか」

「そういうことです。もともと私達の子に世継ぎ争いをさせる気はありませんし、もしも後宮から出る子に後を任せられる優秀な子がいなければまぁ……力ずくでもなんとかできるので」

「がはは。いいじゃねえか」


 割とめちゃくちゃなことを言ってるようだが、仮にも貴族のカルメルがそう反対しないところを見るとまぁいいのかもしれない。

 いいのか?


「ということで、ルミさんは気が向けばこちら側に来ればいいですし、結婚については異論はありませんから」

「良かったじゃねえか、ルミ!」

「ちょっと頭がついていってないんですが……とりあえず、不束者ですが末永くよろしくおねがいします」

「えっと……こちらこそ……?」


 こうして正式な話は置いておくとして、気づけばいつの間にか妻帯者になることが確定していた。

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