Aランクとして
「まずは娘さんの方に声をかけていきましょうか」
カルメル騎士爵へ会いに行くにあたって、とりあえず知り合いであるルミさんを拾っていくことにした。
正確にいえば連れ去るに近い。
好き放題だな……。
まあでも、あのときのことを考えればこのくらい許されるだろう。クエルだってきっと許すはずだ。正確にいえば許さざるを得ない。
「でもあの騒動の後で普通に仕事してるんだな……」
「ま、ビハイド領地はどこも大変だからすぐ呼び出されちゃったんだろーねー」
人ごとと割り切っているビレナがサバサバと言う。
「ビハイドが使った闇魔法、寿命の問題もなんとかしないとか……」
「この付近一帯だけやたら早死すると噂が立つ前に処理しないといけませんね」
ビハイドの禁呪については混乱を避けるためにも特に報告をしていない。となると俺たちで責任をとってなかったコトにする必要があるわけだが……。
「いずれにしても早くエルフをなんとかしないといけませんね」
「焼こう! 焼こう!」
楽しそうに歌うビレナ。もうなんでもいいんだろうなあ……。暴れられれば。
「ちなみにほんとに森を焼いても味方とか禁術の類は大丈夫なのか?」
「ええ。森が焼かれたくらいで失われるものではないから。土地と精霊が重要であって、生えている木は飾りみたいなものよ」
「そうなのか……」
それでも精霊の宿る木とか、燃やすの抵抗あるけどなぁ……。まあハイエルフにまともにぶつかると戦力差があるわけだから仕方ないだろう。
「ついたー!」
そうこうしているうちにフレーメルの冒険者ギルドにたどり着く。
いつもどおり扉を開けた先は昼間から出来上がった筋肉の目立つおっさんたちのたまり場になっていた。
だが、いつもと違う視線を一身に浴びることになった。
「なんだこれ……?」
「ふふ。これが高ランカーの感じる視線だよ」
「高ランカー……?」
「ご主人さまはつい先日Aランク入り。もはや誰もが認める高ランク冒険者ですよ」
「そうか……Aランクか……」
そう言われてみるといつものようなジロジロとした嫌な目線よりも、なにか別の種類の視線を感じていた。
とはいえ俺のことを直接見た人間は少ない上に、ビレナを始めとして超人たちに囲まれただけだろうという視線もかなりの数あることはわかる。
「ま、そのうち慣れるよ! 今更リントくんにちょっかいかけられるのなんて、よっぽど命知らずかバカしかいないって」
「だといいけど……」
ビレナの挑発とも取れる牽制がいい方向に作用してくれることを祈るとしよう。
「さっそくお客さんですよ?」
リリィの声に振り返ると、幼い二人組の男女がいた。
「あ、あの!」
「ん?」
「えっと……リントさん、ですか!」
「ああ……」
目線を合わせるために屈む必要のあるくらいの子たちだ。どう対応していいか困ってリリィを見つめるが、まさしく聖女の微笑みでまったく助けてくれる気配がなかった。
「あの! 僕たち! リントさんに憧れていて……!」
男の子の言葉に驚きを隠せない。テイマーは忌み嫌われることはあっても、決してこんな視線を受けることのない存在だったというのに。
隣の女の子も男の子の声に合わせてコクコクと頷いていた。
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