帰宅
「ただいまー!」
「うわ……帰ってきた」
玄関など一切無視してビレナが飛び込んでいく。律儀にほとんど裸エプロンで家の掃除をしていたミラさんが露骨に嫌そうな顔をしていた。
「そんな顔をしつつも仕事はきっちりやってるところは流石ですね」
「ちゃんとお金を貰えば私は働くわよ」
「うんうんえらいえらい! じゃ、これお土産ねー!」
ビレナがバサーっと収納袋から取り出していくのは王都でしか買えない服や化粧品だった。ミラさんはこの手のものにお金をかけるのが好きらしい。
「え……こんなに……ってこれ?! 一個でいくらすると……?! そんなのポンポン出さないで!?」
「えー、いらない?」
ビレナが残念そうに収納袋に仕舞い込もうとすると慌ててミラさんが飛び込んでくる。勢い余ってスカートがめくれていたがそれどころじゃない顔だ。
「いらないなんて言ってない! 言ってないです! ありがとうございます!」
「うんうんー、今度王都に一緒に行こうねー!」
「はい! ありがとうございますありがとうございます」
ミラさんのことはビレナに任せておけば良さそうだな。
「旦那様はこんな可愛らしいメイドさんまで囲い込んでたんですね」
「なんか言い方悪くない?」
ふわりと着地したティエラが言う。そういえばミラさんのことは知らないか。
「また増えたんですね……」
ジト目で睨みつけてくるミラさん。
「ティエラはエルフの女王でね! これからエルフの森を焼くの!」
「鬼なの!? この子が何したの!?」
ビレナの説明は諸々端折りすぎてたせいでミラさんが目を見開いて驚いていた。
リリィがなんとか説明を加えて理解してもらったが、別の問題が出てきていた。
「さて、ビハイド亡き今この辺りって誰が治めてるのかしら?」
「そういえば……?」
あのあとはカルメル家が取り仕切ってるらしい。あくまで臨時措置ではあるが。
辺境伯の突然の失脚。さらに責任が重すぎたため一族郎党に至るまで貴族としての生活は送ることが許されていないという状況を考えると、おおよそのことがわかっているカルメルは適任だったようだ。他にも男爵以下の貴族が複数で治世に取り掛かっているとか。
「一回会いにいこっか」
「あーいいかもな」
ルミさんのお父さんにもあってみたいしな。
「そうですね。ゆくゆくはご主人様が治める土地ですし、周辺貴族に対する見回りには良いかもしれません」
「え?」
「さ、しゅっぱーつ」
「待ってゆくゆくは治めるってなに!? ちょっと出かけてる間に何があったのよ貴方たち!?」
ミラさんが騒ぎ立ててくれたおかげでなんとなく冷静になったような気がするが俺もちゃんとは聞いてないからな!?
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