ギルドの反応

「早すぎる……」

「そもそもたどり着いたのかも怪しいな……」

「案内人をつけなかったのはそのためか」


 ギルドにつくと偉そうなおっさんたちはのんびりお茶をしていた。

 ヴィレントの呼びかけに応じてようやく姿を表したと思えばこれだ。


「ふん。見たところやはり何もテイムもできておらん。本当につかえな――」

「ここで出して良いのか?」

「勘弁してくれ……場所を作る」


 何も知らない役員を尻目に、ヴィレントと一緒に地下へあるき出した。

 流石にもうこの役員たちに未来がないことはなんとなく察しているのだろう。行く前ほど気を使っていないことが見て取れた。


「ふん……」


 思惑を外されたと思ったギルド幹部は悪態をつきながらついてきていた。




 連れてこられたのは地下の訓練施設。ここなら周囲に人もいないし、魔物が暴れまわっても大丈夫だろう。


「さて、見せてもらおうか」

「どうせ大したものじゃないだろう」


 5人の役員がそれぞれ無防備に突っ立っている。


「良いのか? ほんとに?」

「何を今更」


 意味すらわかっていないようだった。ヴィレントはただ立っているように見えて、かなりの魔力を練って準備を整えている。無論、こちらのパーティーに気を抜いた人間はいない。


「それともやはりなにもないと言い出すんじゃないだろうな?」

「私達の時間は高いぞ? はやくせんか」

「そうか。忠告はしたぞ」


 ヴィレントを見るとニヤッと笑っていた。良いってことだな。


「いけ」


 収納玉から5,6匹の魔物を繰り出した。それぞれ見た目はかなり心臓に悪い上、こちらが完全にコントロールしているわけでもないので自由に走り回る。ギルド役員の間を縫って超高速で移動する危険度Bクラス以上の魔物たちだ。当然無防備にのんきに構えていた役員たちは腰を抜かした。


「ひっ!?」

「な……なんだこれは!?」

「うぐ……」


 漏らしてるのがいないのは唯一の救いだったな。


「だから良いのかって言っただろうに」

「誰が捕まえてくるだけと言った! テイムといったであろう!」

「間違いなくテイムだが?」

「人にテイムされた魔物が我々に襲いかかったではないか!」

「あんなもので襲われる? 冒険者をバカにしてないか? あれはただ走っていただけだ。こちらの呼びかけにも応じず何の準備もしてなかったせいで腰を抜かした間抜けを俺たちのせいにするな」

「貴様……」


 杖を振り上げてこちらへ威嚇する老人。だが、先程まで暴れまわっていた魔獣たちが一斉に俺を守るように周囲を固め、そしてーー


「なんだこれは!?」


 一斉に”威嚇”を行った。危険度B。一般兵士100人以上の戦闘能力を持つ上、見た目も悪いこの魔獣たちの威嚇は、老人たちを震え上がらせるには十分だった。


「さて、ここまで主人に忠実な姿をみてなお、まさかテイムできていないとは言いませんよね?」

「そうだな。見事だ」

「貴様……」


 リリィと示し合わせたようにうなずくヴィレント。俺たちの相手が難しいとわかったら今度はヴィレントを標的に変えた。だがヴィレントとて、もともと百戦錬磨の冒険者だ。ただ貴族というだけで幹部に座ったこいつらとはまるで、実力が違っていた。


「で、私達の相手はどこかしら?」

「そうですね。帰るまでには用意すると言っていましたし」

「それは……」


 言葉に詰まる幹部。


「それから、今回の調査結果ですが、あそこを新ダンジョンとするのはおすすめできません」

「なんだと! あれでどれだけの金が動くと思ってるんだ!」

「それでどれだけの人が死ぬかおわかりですか?」

「冒険者などその危険を承知の上でやる仕事だろう!?」

「そのとおりです。ですが国民はその限りでは有りません」

「国民……?」


 何もわかっていない様子の幹部。


「調査不十分のまま新ダンジョンと喧伝したのはあなた方のミスですね」

「ふん……隣の国では偉いのかもしれんが我々に指図など――」

「この件は直接国王へご報告いたします」

「なにをっ!」

「小国の出の分際で!」


 リリィに食って掛かるギルド幹部たち。その顔には焦りが見えた。


「まずは私達の相手を見つけるのがあなた方の仕事ですね」

「ふんっ。我々に楯突いたこと、後悔させてやろう」

「なにが国王陛下へ報告だ。出来もしないことを……」


 冷や汗をかきながらも悪態をつくのに精一杯なギルド役員たちをヴィレントと笑いながら眺めていた。


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