戦果

「そういえばリントくん。ヴィレントにもらったあの鳥は?」

「あー……そういえば」


 ひとしきり楽しんだあと、真面目な話に戻る。

 ベル特製の収納玉は生き物でも保管できる。これにあのしゃべる鳥はしまっていたので、解放してやった。


「ヒニチ ヲ ツタエヨ! ヒニチ ヲ ツタエヨ!」

「早速これか……」

「ご主人さまとベルの魔法がなかったらうるさくて仕方なかったでしょうね……」

「で、何日にする?」


 必要ない言葉もずっと発し続けているところを見るとうるさくて仕方ないというのはそのとおりだと思う。可愛らしいことは可愛らしいんだが……。


「このダンジョン、攻略は邪龍の完全な封印か、討伐ということになるぞ」

「そうねぇ。流石にそれは、いますぐやりたくはないわね」


 ハイエルフの問題も残っている中、眠れる邪龍を刺激したくはない。


「私が補強して確認したところ、何事も無ければ数百年は持つと思いますが」

「数百年もあれば勝てるようになるかな?」

「何事もなければ……か。もう少し早く考えておいたほうがいいだろうな」


 ベルがそう言う。確かに……。ましてここをダンジョンとして指定してしまえば、不必要な刺激はいくらでも起こりうるだろう。そうはさせないつもりだが、発見の報は各地に回っているだろう。たどり着くだけでも難しい場所とは言え刺激をしないとは限らないからな。


「戦果はこのスライムで十分でしょうし、状況をいち早く伝えるためにも即日帰還を告げた方がよいのでは?」


 リリィがまともなことを言う。反対しそうなのはビレナだが、そちらを見ると特段気にした様子もなかった。


「ん? 今日帰るなら、今日行けるところまで行けばいいよ?」

「こいつ一日で踏破するつもりだ……」

「私はこの状況で相談が必要なことが信じられん……」


 バロンは今も周囲の警戒をしてくれているくらいだ。純粋な戦闘力ではランクS相当でありながら慎重派。常識が壊れそうになるのをギリギリのところで防いでくれる防波堤だった。バロンがいなかったら俺の常識はもうとっくに失われていたに違いない。


「いや……リント殿の常識はとっくの昔に崩れ去っているだろう……」

「そんな?!」


 味方だとおもってたのに!


「ま、とにかく今日帰るんだよね?」

「約束は明日ってことにして、朝には着くように帰りましょうか」

「じゃあそれで!」


 用件を伝えて喋る鳥を解放する。

 すぐにダンジョンの向こうに逃げるように飛んで消えた。


「ここから出るときに邪龍の咆哮に巻き込まれなければ良いな」


 ベルが物騒なことを言う。

 多分大丈夫だと思うが一応注意は払いつつ、ダンジョンの攻略を再開した。

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