スライム

「にしても……すごいなこいつ……」

「くっ……なんで私ばかり……」


 金色のスライムはビレナとの追いかけっこ中と違い隙だらけだったので簡単にテイムできた。

 今もバロンの方に擦り寄ってバロンを色んな意味でビクつかせていた。


「さすがリントくんだねえ。あっさりテイムしちゃうなんて」

「魔物のテイムってさ、相手の求めてるものを差し出してあげるのがコツだから」


 それだけ言うとバロンがなにかに気づいたようにこちらを見つめた。


「まさか……リント殿……」


 信じられないものを見るように目を見開くバロン。可愛そうだがそういうことだ。


「ま、スライムって性別ないけど、どちらかと言うとその子はメスよりらしいからさ?」

「関係あるか! んっ……ちょ、やめさせろ!」

「いやぁ、契約だしなぁ」


 もちろん止めさせることはできるがスライムに感じさせられるバロンが可愛いのでそのままにしておいた。

 契約内容はまあ、よくある定期的に餌をくれというものが、定期的にバロンを襲わせろになっただけだ。気持ち良さそうだしWIN-WINの関係が築けているようでなによりだ。


「気持ちよさそー」

「こいつ……なんでそんな的確に!? というより、これはどういう原理だ!」


 バロンの衣服は綺麗に脱がされていた。そういう特殊な粘液があるのだろう。あと多分、媚薬的な効果もある。本当に一体何のために現れた魔物なのか気になるな……。

 と思ったらベルがその答えをくれた。


「あやつの趣味が反映されたダンジョンだな……」

「あやつ?」

「邪龍。性別の概念はないが封印前は男女問わずきれいどころを集めさせておったからな」

「なるほど……」


 ダンジョンの主でありエネルギーの供給源の邪龍の思惑が反映されているというわけか。


「それにしてもベル。なんか遠くないか?」

「ふっ。私もバカではないのだ。そこのダークエルフの次にターゲットになりやすいのが私であることくら……ちょっ!? いつの間に回り込みおった?!」

「えへへー。見てみたいなぁ。ベルちゃんのあられもない姿」

「いつも見ておろうが!? いや今のは誤解を生む……ってちょっと待て、運ぶな! やめよ! やめさせよ! ごーしゅーじーんー」


 いつもどおり笑顔のビレナを止めるすべなど有るはずもない。

 近くまで連れてこられたベルを見つけたスライムが俺に確認するようにキョロキョロベルと俺の間で揺れ動いた。


「いいぞ」

「ご主人っ!?」


 許可を出した途端金のスライムがその身体を膨らませてベルに飛びついた。全身に絡みつくように襲いかかり服を溶かしていく。ちなみに今回はちょっと、いつもと違うことをしてみた。


「にゃっ!?」


 後ろにいたビレナも同時に襲って見るようにしてみたのだ。


「リントくっ……んっ!?」


 効果は覿面。なぜかバロンとベルよりも身体がビクビクしていた。


「なになになにこれっ!? ………んっ……あっ………………リント……くん?」


 トロンとした表情で内股になって耐え続けるビレナ。なんかドキドキするくらい可愛いぞ!? いつもやられてばかりだからたまには……


「え?」


 いつのまにかビレナが俺のところに高速移動してきていた。


「ふふ……いただきます」

「いやさっきまであんな動きにくそ……」

「関係ないにゃぁ」


 トロンとした目のまま、超高速でうごいたビレナにとらえられた。

 油断していたせいかなにか、久しぶりに姿をとらえきれないスピードだった……。


 結局未開拓のダンジョンでパーティーが始まるという前代未聞の事態になった。楽しかったです。

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