天使化

 作戦会議。まずはリリィと接触できたのはいいが、今後どうしていくかだ。




「んー。とりあえず今日の目的はリリィが強くなることだったからね」

「最悪私は死んだことにしていいです。あと多分この力使ったらあっさり聖女は卒業できちゃいますし」

「あっさり?」


 そもそも聖女の卒業ってなんだ?


「多分、天使化できます」

「は?」


「ほら」といってふわりとベッドから降り立つと、重力に逆らってリリィの身体が浮き上がる。同時に身体から光を放ち、光の渦から羽が生まれていた。


「これを見せたらもう、聖女様は天に還りましたとゴリ推してしまっても良いのではないかと」

「まじか……」


 ビレナの角も大概だがこちらもインパクトが強かった。2人とも好きにいじれるようでいまは羽は引っ込んでいる。


「あれからも研究してたんだねー。天使化」

「はい。聖女なんて暇でしたが、この手の文献だけは一番情報がはいりますからね」


 どうやら天使化というスキルは元々あるものらしい。聞いたこともない話だったが、リリィはずっとそれを目指していたようだ。


「天使化した人間はそれまでと比べて聖属性の魔法適性が5段階あがります」

「寿命もなくなるしね」


 軽いノリで出てくるとんでもない話たち。もういちいち突っ込むのはもう諦めていたがこれは看過出来ないレベルだ。


「適性5段階って……」

「Dランクが天使化するとSランクになるねー」

「私は元々Sランクだったから、+が5つ付くことになります」

「もう意味がわからない……」


 S+でも伝説の存在。その上は神話の存在だろうに……。


「ま、リリィはそれでなくても伝説の聖女様だったわけだしねぇ」

「恥ずかしい……」


 恥ずかしがることではない気がするがリリィは照れて顔を赤らめていた。シーツを巻いただけの格好でその表情はやめてほしい。下半身に悪い。


「あ! 良いこと思いついた」


 ビレナが飛び起きる。絶対ろくでもない考えだ。


「リリィが神の使いとしてリントくんを指名しちゃえば神国民の支持はこっちに集まるよ!」


 なんだ神の使いって……。それにこんなぽっと出の男にいくら聖女の言葉があってもすぐに支持が集まるとは思えない。

 真面目な話に戻す必要を感じて頭を切り替えるが、あろうことかリリィがこれに乗っかろうとしている。


「なるほど……それでご主人さまを……」

「え、まじでやるの?」


 冗談じゃないのか? その作戦。


「リリィ、国にまともな味方も多少はいるでしょ?」

「クーデターでどのくらい残ったかわかりませんが……」

「リリィが神の使い、リントくんがお飾りのトップ、あとはリリィの味方で国を回せばいいよね?」

「なんとか……なるかもしれません」


 なんとかなるのか……。大丈夫かよ、神国。


「じゃああとはーー」


 ついていけない俺を置いてけぼりにして、2人がクーデターの計画を立て始めていた。

 俺はこの僅かな期間で2度も国が傾く神国へ同情を隠しきれなかった。

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