神国の行方
「さて、これからどうしよっか」
「もうこれだけ力があったらどこにでもいける気がしますけど……」
やはりリリィも力が強まったらしく、いまなら死んで数秒の生き物なら生き返らせることができそうと言い、実際に窓に飛んできた虫に実践して成功させていた。
なんだそれ……。いっそ怖い……。
「これは流石に公開できる情報じゃないな……」
「ご主人様の力もその範囲なんですけどね。十分に……」
そう言われてもあまり実感はないのがテイマーの悲しいところかもしれない。
拳を振るっただけで衝撃が飛ばせたり、死者蘇生の禁忌魔法が使えたりすれば違うんだろうけどなぁ。
まぁいまはそんなことよりリリィをどうするかだな。
「取れる手段としては、例えばリリィはここで死んだってことにすれば、一応自由にはなれるよね」
「あー」
ビレナの案に納得する。確かにそれでいけることはいけるだろう。
ただ問題は発生する。
「Sランク冒険者としてのリリィも同時に、死んだことになっちゃうからなぁ」
「まあまたあげれば良いにしても、ちょっと面倒ですね」
ちょっと面倒なだけで済むのがすごいんだが、まあいい。
「じゃあ、どうする?」
「んー、やっぱ神国ぶっ壊すかぁ」
ビレナは壊したがりだった。
「ちょ、ちょっと! 一応あんなんでも私の故郷なんですよ! 簡単に壊さないでください!」
良かった、常識人がいて。
話をすすめるために1つ提案をする。
「教皇を差し出す代わりに聖女の自由をもとめるってのは?」
これだけあっさり聖女であるリリィと接触できたことを考えると教皇の方も大した苦もなくいける気はする。ほとんどビレナの意味のわからない力によるものだったが……。
「天才!」
「あー……」
俺の提案にビレナは乗り気だがリリィはためらった。
「なんか問題があるの?」
「えーっと、多分キラエムが……」
「キラエムって……元枢機卿っていってた?」
「はい」
話によればキラエムは、教皇と似たもの同士とのことだ。この場合は悪い意味で。
「多分私を手放す気はないというか……」
教皇体制で枢機卿まで上り詰めたのだからそれはそうなるんだが、独裁者色の強い人間のようだった。
聖女を見逃す気はないし、教皇を生かしておくつもりもない。冒険者相手に交渉に応じるようなタイプではないとのことだ。
「やっぱり壊すしか……」
「なんかもう、面倒だからそうしたほうが良い気もしてきました……」
だめだ。常識人が早くも離脱しかけている。
「リントくんが乗っ取る?」
「あー、ご主人さまにトップになってもらいましょうか」
「国民全員テイムしておけばクーデターの心配もないし」
面倒になった2人がとんでもない話をしはじめたので軌道修正する。
「とりあえず、見張りは倒してきちゃったんだし少なくとも朝までにどうするか決めよう」
そんな忙しいタイミングでナニをしてるんだという野暮なツッコミは誰も入れなかった。
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