聖女リリルナシル
「さてー。いよいよ聖女様とご対面だね」
「ほんとにやるのか?」
「んー。最近会ってなかったけど、多分これが良いよ」
「そうか……」
聖女の王都訪問は大々的なイベントだ。
今日も式典が行われ、城下町を練り歩いたらしい。そして夜、泊まってる宿と部屋の情報をどこからか知らないが持ってきたビレナについて、ここまで来た。
今いるのは部屋の前。見張りなどビレナを前にすれば意味をなさなかったわけだが、これだけの大人物にアポ無し直撃で本当に良かったのだろ――
「じゃ、突撃ー! 久しぶり! リリィ!」
俺の葛藤も虚しく、ビレナはもう部屋に飛び込んでいた。
「わわっ!?」
部屋に入ったら罠でした! みたいな展開でなかったのは良かった。知り合いというのは本当だったので、影武者だとかそういうこともないことは確認できる。
ただーー
「来るのはわかってましたけど! 男の子を連れてくるなら言っといてください!」
「にゃははー」
初対面の聖女様は、バスタオル1枚しか身につけていなかった。
事前情報通り大きなそれを隠すには心もとなく、色々とまろび出ていた。
「もうっ! お嫁にいけないです……! 責任取ってもらいますよっ?!」
「そこは心配しないでいいよ。今からちゃんと責任とるから」
「え、嘘?! それは冗談でえっと私経験なーーあっ」
半裸というかもはや全裸な聖女様に襲いかかる見た目は美少女の獣人。目を逸らすのがマナーなのだろうがまあいっかと思ってガン見してしまった。眼福眼福。
「見られて……」
「大丈夫大丈夫」
ビレナの攻・撃・に抵抗する力をなくす聖女様。全然大丈夫ではないんだが小声でビレナが何かを囁くと、赤かった顔をさらに真っ赤にしてなにか考え込む聖女様。
そしてーー
「えっと……不束者ですが……」
「ええ?!」
裸のまま三つ指をつく聖女がそこにいた。
「ふふ。やっぱり、この子もほら、Sランクになるような子だから、リントくんの話したらすぐだったよ」
「それって……」
「テイムしてください私も。ビレナを見たらわかります。私が聖女なんてやらされてる間に随分差をつけられたなーと思っていたら……一瞬で強くなる手段があるなんて……」
自力の段階でSランクある人に一瞬で強くなるという表現も……いやまあいいか。
「負けられないんです。そのためなら聖女の祝福はじめても捧げます」
「なんでそこまで……」
「にゃはは。Sランクなんてみんなどこかぶっ飛んでるんだから考えたってムダムダー!」
ビレナが言うと説得力が違った。
「じゃあ、えっと……よろしくお願いします」
「お手柔らかに」
◇
お手柔らかにしてもらう必要があるのはこっちだった。
結局ビレナも交じって3人でお楽しみだった。とても良かったが同時に失うものも多かった。物理的に。
「流石にきつい……」
「ふふ……ご主人様、可愛いです」
途中からなぜかご主人様呼びになった聖女リリィに撫でられてベッドに沈む。
ちなみに愛称で呼ぶのはご主人様としての義務らしいので、俺も彼女はリリィと呼ぶことになった。
「良かったでしょ?」
「こんなに良いならもっと早く知っておくべきだったかもしれません……いやまぁ、ご主人様に会えるまで取っておけたなら良かったのかもしれませんが……」
頬を染めてこちらへ抱きつくリリィ。ビレナの時にはなかったいじらしさがあった。
テイムするだけならそこまでやる必要がないという話に関しては、この場で口に出す野暮な人間は誰もいなかった。
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