ギルドマスター

「まぁそりゃ、そうなるよなぁ」




 王都上空。


 王都の端にある冒険者ギルドでは、突如現れたドラゴンに大混乱に陥っていた。


「あれ、知り合いか?」

「ほとんどね」


 冒険者たちが集まって警戒しているだけだからビレナが説明すればなんとかなるか。


「あっ、ちょっとまずいかも」

「え?」

「1人だけちゃんとした魔法使いがいる!」


 それだけ言うとすばやく鞍から安全装置を外し出すビレナ。


「リントくんはそこにいてね」

「は?」


 次の瞬間、ビレナはギルから飛び出し、弓と魔法を構える冒険者たちのもとに飛び込んでいった。


「待って待ってー」

「まじかよ……」


 流石に俺にここから飛び込んで戦う力はない。というか落ちたら死ぬ。いやカゲロウを出したら大丈夫なのか? でも試したくはないな。少なくとも痛いだろう。


「ギル、ちょっと高度をあげよう。弓が届かないように」

「グゥゥゥゥゥゥ」


 返事をしただけのギルにまた地上でざわめいてしまったが、程なくしてビレナが鎮めた様子が見えたので着陸した。


「ひっ……」

「まさかほんとに竜使いが……」

「もー。信じてなかったのー?」


 ビレナはそういうが俺はまだ冒険者達よりの気持ちが残っていた。自分の中の常識が欠片でも残っていたことになんとなく感謝した。


「ふむ……君が……?」


 一斉に俺に視線が集まる。信じてない顔だな。

 声をかけてきたのは尖った帽子にローブ、長身の男とそう変わらないサイズの杖という完全な魔道士スタイルのおじいさんだった。青を基調にしたローブは星空のように宝石が散りばめられている。実戦用ではなくこれは礼装の一つだったはず、ということはかなり位が高い人間のはずだ。


「リントくん、精霊出して」

「あー、わかった」


 呼ぶといつもどおり、俺の周りに炎がまとわりつく。


「これは……まさか精霊召喚?! こんな高位の精霊を!?」


 もどきではあるんだが冒険者たちの俺を見る目が変わったので何も言わないでおこう。


「と、いうことで、今後この子を見ても心配しないでね」

「グルゥ」


 甘えるドラゴンを撫でるビレナを見て安心したのか、冒険者たちも納得して解散していく。

 一方で俺を見る目が明らかに変わったのも感じていた。


「まさかあのビレナについていける者がいるとはな……」

「はは。リントくんはすごいんだよー?」

「そうだろう。すまなかったな。少し話がしたい。よろしいか?」


 先程の老人と話すビレナを見ると、ちゃんとした知り合いのようだ。そして多分、ちゃんとした魔法使いっていうのも、この人。


「まずは自己紹介だな。王都ギルドのギルドマスターを努めている。ヴィレントだ」

「ギルドマスター?!」

「元Sランク冒険者だよ」


 すごい人と話をすることになってしまった。

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