次へ向けて

「「すみませんでしたぁっ!!!」」


 その後、着替えを含めて諸々が終わったところで、2人にすごい勢いで頭を下げられた。


「にゃはは。いいよいいよ、その話は後でね」


 なぜか俺の代わりにビレナが対応する。

 ちなみに「あとで」と言われて2人とも少し血の気が引いていた。


「すぐに昇級……Bランク、いえ、Aランクにでも」

「いやいや、普通にCランクに上げてくれればいいよ」


 俺が答えるとビレナが言葉をかぶせる。


「そうだねー。BもAすぐだろうし」

「いや……まぁもう何もいうまい……」


 ビレナに常識は伝わらない。


「と、とにかく、これでリント様もCランクです」


 昨日の態度からは考えられない豹変ぶりだ。


「そりゃまぁ、あんな姿みられたんだから偉そうに出来ないって」

「くっ……」


 ビレナが挑発する。昨日の仕返しか……。

 恥ずかしそうにビレナを睨む受付嬢、ミラさんは可愛いのでそれが見れただけでまあ良いだろう。


「あと怯えてるのはね、昨日の態度が本部にバレると2人立場的にまずいからだねー」

「なっ……」


 絶望的な表情を浮かべるミラさん。おっさんの方も動揺は見られた。

 どうやら本当らしい。


「し、仕事がなくなるのは困るんです……どうか……」

「まぁどうしてもって言うなら考えなくもないけど……」

「なんでもしますっ!」


 必死だった。まあ正直この田舎でギルドより稼げる仕事はないだろうしな。


「なんでも……?」

「ひっ……は、はい」


 ビレナの脅しに屈したミラさんは耳元で何か囁かれていた。ミラさんは黙ってコクコク頷くしかない。

 次はおっさんだった。


「えーっと……先生……」

「んー? ちょっとAランクなんかになっちゃって調子乗ったね。あれだけ見た目に惑わされるなって言ったのに」

「すみません……」

「あんたはまぁ、ちょっと授業」

「ひっ……」


 大の大人が本気で怯えていた。どんなトラウマを植え付けたんだ、ビレナ……。


「ということで、Cランク昇格おめでとー!」


 渡された冒険者カードは、ちょうどテイムしたギルと同じ黄土色に輝いている。

 Cランクから冒険者カードは輝く。いわゆる銅級。プロの冒険者だ。


「ありがとう……実感がないけど」


 つい最近まで、ようやっとの思いでDランクというレベルだった俺があっという間にCランクである。現実味はないがビレナについていくというのはこういうことなんだろう……。


「さってー、じゃあ次は!」

「フレーメルか?」


 ビレナの話を聞いてから、あの本の行方が気になっている。


「んーん。先に聖女様」

「あぁ」


 確かに聖女様はいつでも会える相手ではない。


「タイミングもあるけど、フレーメルに行く前に聖女様がほしい」

「ほしいと来たか」


 行けば仲間になる前提だ……。大丈夫かほんとに。


「にゃはは! ま、なんとかなるって!」


 いつもどおりゴリ押しされ、王都へ向けてギルを飛ばすことになった。


「ちなみにミラさんに何を……?」

「んふふー。エッチだねぇ、リントくん」

「何も言ってないんだけど……」


 そのまま誤魔化されて有耶無耶になった。

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