テイマーの扱い

 最寄りの村だったガイエルの冒険者ギルドに報告に来た。王都に比べれば平屋の少しボロが出ている作りではあるが、これでもしっかり冒険者ギルドの機能を持っている。


「はぁ……たまにいるんですよね」


 ガイエルの受付嬢の反応はこんな感じだった。


「実力もないのに昇級しても仕方ないですよ?」

「えー、でもリントくん、ドラゴンテイマーだよ?」

「いくらSランクの冒険者でも、ギルドに嘘はいけませんよ」


 取り付く島もないとはこのことだった。


「それでも実績は十分なはずでしょ!」

「はぁ……。ビレナさんはずっとソロで進められていたようですので特段審査は必要なかったんですが、このようにパーティーに甘えてランクを上げる冒険者を止めるためにギルドにもルールがあるんです」

「審査ってのはどういう風に行うんですか?」


 これ以上ビレナが対応すると揉めると思ったので俺が前にたった。


「どうしてもというのでしたら、明日朝個別の昇級試験を実施します」

「試験……?」

「はい。本当にドラゴンテイマーだというなら、明日朝連れてきてもらえばそれでCランクにしますよ」

「なるほど……」


 とにかく実力もないのに昇給させるわけにはいかないとの一点張りだったので、明日試験官を呼んでもらい試験をするとのことだった。


「じゃ、それでお願いします」

「良いんですね? 痛い目に合うかも知れませんよ?」


 最後まで挑発的な受付嬢にビレナがいまにも施設ごと壊しそうな苛立ちを見せていたが、受付嬢が気づくことはなかった。


 ◇


 早朝、言われた通りギルドに来ると、すでに外に昨日の受付嬢と屈強な男が立っていた。

 ビレナはまだ寝てたので置いてきている。


「はぁ、やっぱり竜なんて嘘でしたね」

「まだ来てないだけだけどな」


 繋がりはあるのでなんとなくわかる、いま向かってるところだろう。


「はいはい。で、竜が間に合わなかったからとか言い訳してもいいですけど、ランクは上がりませんよ?」


 とことん態度が悪い受付嬢だった。顔が可愛くなかったら腹が立っただろう。顔が可愛いのでまあいい。


「その人を倒したらいいのか?」

「まさか。この人はAランクの元冒険者ですよ? あなたが倒せるはずないでしょう。試験官が認めれば合格。わかりやすい基準でいえば一撃入れたら合格です」


 見ると男の浅黒い肌には無数の傷があった。歴戦の冒険者だったことが伺える。

 ただ、ボサボサの髪にこちらをあからさまに見下す態度はすこし、気に障った。


「まともな従魔なしか……悪い事は言わないから地道にやったほうがいいぞ? 聞いた話じゃ無理やり上のランクのやつに手伝わせたらしいが」

「おっさんは可愛くないからムカつくな」

「は?」


 これもテイマーの現状といえばそうなのかもしれない。フレーメルでもテイマーは冷遇されていた。

 従魔なしでは何もできない雑魚。それがテイマーの評価だ。まあその通りなので何も言うまい。


「で、もう始めていいのか?」

「はぁ……どうしますか? ギュレムさん」


 試験官で呼ばれた男はギュレムというらしい。


「こういうやつは一回痛い目に合わせりゃいいだろ」

「わかりました。それではこれより、冒険者リントのCランク昇格試験を開始します。始めっ!」


 元Aランクとは言え見ている限り大した実力には思えない。いや多分昨日のでだいぶ麻痺してる部分があるが……いずれにしてもこれならビレナが起きて来る前に終わるだろう。

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