ドラゴンテイマー
「はい着いたー!」
竜の巣の名の通り奥地に潜ればアースドラゴンやフレイムドラゴンなどがチラホラいる。普通の冒険者にとっては出会ったら運がなかったと神に祈りを捧げる相手だ。
「グルゥァアアアアアアアアアアアア」
「うるさい!」
パシュン、と音がして竜の頬を衝撃波がかすめていった。遅れてビレナが拳を突き出したのを確認する。
「まじか……」
竜もびっくりして目を丸くしてるじゃないか。
黄土色のベーシックな土竜に見えるが、火をはいているから2属性持ちのレアドラゴン。危険度はA+。俺1人なら余裕で100回くらい死を覚悟する相手だ。
「まだやるの?」
「グッ……グルルルルル」
恐怖の象徴である竜よりビレナがめちゃくちゃ過ぎてもうビレナのほうが怖かった。
その恐怖はドラゴンとも共通認識として分かり合えたらしい。テイムを試すと一瞬で同意を得た。こんなのありかよ……。
「キュゥウウウウウウン」
「ふふん。いい子じゃ―ん」
俺にはわかる。頭を差し出してか細く鳴くドラゴンが怯えているのが。
「リントくんもドラゴンテイマーになったし、もうサクッとAランクくらいにあげちゃいたいね」
ドラゴンテイマーなんざ伝説の存在だと思ってたよ……。まさか自分がなるとは。
さらっと言ったAランクというのも、ビレナと会うまでは無縁の単語だったものだ。
「名前は?」
「ああ、決めないといけないな」
基本的に野生動物に名前などない。この名付けも信頼構築には重要なステップだった。
「ギルにしよう」
「いいね! いいよね?」
パンパンと頭を撫でるというか叩くビレナ。すごい勢いで頷くドラゴン、改めギル。
よかったことは、ドラゴンテイマーという恐れ多い称号も、このわけのわからない光景のおかげで実感がわかないことだろう。
「さてと、これでさ、リントくん自身は大丈夫だね」
「大丈夫?」
「さすがにドラゴンテイマーにもなればSランクでも文句言われないってこと」
「ああ……」
Sランクパーティーを目指すというのは本気らしい。
「というわけで、あと必要なのは……私もリントくんも遊撃だからなぁ。仲間集めだね」
「なるほど」
パーティーは基本5人。それを超えると連携が難しいと言われている。
あと3人と仮定すると、ほしいのは――。
「「回復士ヒーラー!」」
遊撃手ではあるがすでにSランクの拳闘士であるビレナは前衛にもなれるし、俺も竜に頼れば前を張れる。攻撃力は言うまでもないとなると、一番必要なのは補助魔法使い、中でも回復に優れた人間だ。
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