パーティー申請
次の日、ビレナと2人冒険者ギルドへやってきた。
「パーティー申請をします」
「あの……本当によろしいんですか?」
「もちろん」
受付嬢に怪訝な顔をされながら、ギルド中から嫌な視線を受けながら申請手続きをすすめることになり、居心地が悪い。
「さーて、今度はパーティーもSランクにするぞ―!」
「本気か……? 本気か……」
Sランクとかもう、王族と結婚するぞくらい突拍子もない話だったが、目の前のSランク冒険者が言うと途端現実味を帯びてくる。少しは役に立てるようにならないとなと身が引き締まる。
と、茶々を入れるように1人の男がこちらへやってきた。
「おいおいビレナよぉ」
絡んできたのは昨日とはまた違うむさいおっさんだった。
「んー?」
「おめぇまさか、そこのひょろいのとパーティー組むとか言わねぇよなぁ?」
「なんで?」
「ちっ。おいてめぇ。この俺がわざわざ声かけてやったってのに」
「ふふ……小さい男だね」
ビレナにその意図がなくても、身長と位置関係の問題で目線が股間に向いている。いやわざとかもしれない。
いずれにしても、男を逆上させるには十分な挑発になった。
「調子に乗んなよチビが! 最近Aランクになった程度の雑魚と俺を一緒だと思うな!」
武器にこそ手はかけないものの、男の拳に魔力が帯びはじめる。それはもはや武器がなくても凶器と呼べる。
「へへ。どうだ? いまなら謝れば許してやるぞ?」
「ほんと、色々小さい男だな」
次の瞬間、人1人を倒すには十分すぎる拳が容赦なく小柄なビレナに襲いかかる。普通に考えればひとたまりもないだろう。
だがーー
「あははー。昨日までなら効いたかもしれないんだけどね」
よそ見したまま片手で止められている。
「なっ。馬鹿な……」
「私昨日、この子に強くされちゃったから」
頬を染めて言うな。それとこれとは違うだろ。あとビレナは最初から強かったって……今はそれどころじゃないな。
「こいつ……!」
空いていた方の手で更に殴りかかる大男。一撃目で力の差に気づくべきだった。
「ま、一緒にしてほしくはないよね。何年もそのランクで止まってる雑魚と、あっと言う間に追い越した私を」
一回転。
ビレナが回ったことは風圧で確認できた。見えはしない。
次の瞬間には大男は吹き飛ばされていた。昨日の俺のときの比ではない。卓を3つ木っ端微塵にした上に衝撃で周囲十数の椅子や机をなぎ倒していた。
「ごめんねマスター。片付けよろしくー」
「少しは加減しろって」
「にゃははー。相手が弱すぎたんだよ。あれならリントくんたちでも倒せるよ」
「それは……」
ちょっとそんな気はしている。
「まあお前ならなんか、いけそうな気もしてくるな?」
「きゅっ!」
ちょっと無理して凛々しい表情をつくったキュルケが、可愛らしかった。
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