2649年12月2日18時 東叡國 サムハラ②
松野が料理に舌鼓を打っているところ、新たに店を訪れる者がいた。
「おぅ、どうも~」
引き戸が右から左に滑り、白髪まじりの男が2つ紙袋を提げながら入店する。
彼はそれから、布に巻かれた細長い筒状のもの(恐らく猟銃かなにかであろう)を背負っていた。
「いらっしゃい、久しぶりですね
立向居の問いに初老の男:別所は応じる。
「うん、雉が2羽捕れたよ~、あとは家の近くから
「
話を聞いているだけで、松野は
(食してみたいなぁ・・・・雉もここ最近食べてないしなぁ・・・)
松野の考えを察してか、別所は身体をこちらに向き変えてきた。
「兄ちゃん、見たところ今食ってるやつは朒入ってるねぇ・・さては俺たちと同じで
身体改良は、消化器官に草食動物由来の微生物を移植して蛋白質を合成する能力を得ることから身体改良を受けていない者は、被施術者を”べこ(牛)”と呼ぶこともあった。
「ええ・・・そうですね、おかげで
「うーん、つまんないよねぇ、朒も食わない生活は・・・最近は
「そうですねぇ・・・」
松野は深く頷くと、別所の背中に目をやった。
「気になるかい?」
別所が松野に応えを促す。
「はい・・・正直なところ」
「こいつは
(これは使えるかもしれないな・・・)
「兄ちゃんもコレやるんだろう?」
別所は不気味な笑みを浮かべる松野に対して、猟銃の包みを指して言った。
「いえ・・・昔の話ではありますが、”射的”はかなりハマったものです。好きこそもののなんとやら、とはいきませんでしたが・・・」
松野はそう返したものの、己の内に秘める闘争本能を抑えるのに必死であった。
「沫衝弾はどこで購入しているんです?銃砲店では取り扱いがないはずですが・・・・もっとも、最近は民間にも卸されているかもしれませんが」
「”裏”に知り合いがいれば、調達はかなり簡単よ。それこそ、小銃弾くらいは軍属に知り合いがいれば融通してくれるもんよ」
別所は得意げにそういったものの、カウンター越しに立向居が自制を促すような目線をやっていることに気付き、少しきまり悪そうに右頬を掻いた。
「ちわ~す、今日空いてます?」
常連らしき男が一声かけてきている。
「あら、
丸太のように鍛え上げられた肢体、端正かつ精悍さを併せ持った顔つき。
この店”サムハラ”にはこうした「剛の者」が多く訪れる。
松野の防衛本能は、この男に対しても危険信号を発していた。
しかし、同時に松野は新たな
(これだから、人生は面白い・・・)
日々の”出会い”に感謝する松野であった。
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