扉を開けて飛び込んできたのは、足利の配下の一人である鮫島であった。


「どうしたのだシエラ?(鮫島の洗礼名)」

足利はそう鮫島に問うと、教団の僕である彼は即座に応じた。


「ハッ!!アルファ聖師しょうにんに従僕たるシエラめが申し上げますッ!!

 電探レーダーに複数反応がございまして・・・端的に申し上げますと・・・恐らく北部軍管区所属の哨戒艦が4隻迫っております」


足利は瞬きほどの間、驚愕の色を顔に浮かべたものの”正常”を取り戻した。

得物を取り出すため、懐に手を突っ込んだままの客人シェンションに向き直ると

く此処を立ち去られよ、これは取引どころではないッ」

と言い放った。


先程まで薬物で重火器を密輸しようとしていた人間から出たとは思えぬ正論に、先生シェンションは動揺したものの、「失礼・・・」とだけ伝えて部屋をあとにした。


足利は、彼の影が見えなくなるのを確認すると吸息し、怒声を飛ばした。

「なんでここに官憲来てんだよッ!嗚呼ッ!物買うって段階ステージじゃねえぞ、オイッ!」

「”隠密機能停止”《ステルスアセット・レリィヴ》!!折伏しゃくぶくを開始するッ!」

「官憲はこの國の穢れッ!!清浄あるのみ!」

と矢継ぎ早に言うと、騒ぎによって部屋に駆けつけていた信徒たちは、尻に火のついた牛のように興奮を発露させた。


聖師しょうにん仰言おおせごとのままにッ!」

信徒たちはそう口々に言うと、それぞれの持ち場に駆けていった。


ぽつん、と一人残った足利は頭を抱え、

「どうしよっかなぁ・・・」

と呟いた。


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