松野と謎の男が激突した数時間後----


北方、能代港沖にて近海漁を行うには似つかわしくない船影が一つ・・・


「很高兴认识你 先生・・・」

灰色の背広を着た恰幅の良い男はそう言って、左手をふんわりと添えながら、目の前に立つ異邦人と手を握った。


「认识你我也很高兴、足利あしかがさん、私こちらの言葉大丈夫よ・・・続けてねぇ話」


足利と呼ばれた男は、ドライな態度を取られたために刹那渋い顔をしたが、商談を穏便に済ませるため怒気を胸の奥深くに押し込んだ。


「先生、先日融通してもらった春節チュンチエ・・・とても良かったですよぉ~官憲どもは6匹ほど”おっちんだ”ようでしてねぇ。まぁこちらは”倍”殉教者を出しましたが・・・」

「足利さん・・私はうるさいの嫌いね。そちらの人どうなたかは関係ないよ、幾ら出す?私いつまでに届ける?ただそれだけの話」


足利は、またも渋い顔をした。


春節チュンチエとは尖箭チェンジャン-5対戦車誘導噴進弾の隠語である。

教団では政府の治安維持部隊と衝突するにあたり、大陸から大量の兵器を購入、軍事顧問を招いての練兵なども各地のネストにて行っていた。


足利は屈辱を発散するため体の前で組んだ両手の手首を回しながら上に重ねた左手で右手の甲をつねった。


しかし、これはビジネスである。話がまとまれば良いのだ。

四方山話をする気のない異邦人に苛立ちを抱きながら話を続ける。


「では実のある話をしましょう、今回はこちらで」

そう言って足利は指をパチンッと鳴らし、ブリーフケースを持った配下を呼んだ。


配下はブリーフケースの被せを外し、その中身をのぞかせる。


「哦・・・足利さんこれはどいうこと?え?コレ」

先生シェンション”は中身がマンギラート紙幣の束でないことに狼狽える。


「足利さん・・・これは契約違反ヨ?春節チュンチエ1本につき15,000マンギラート、簪子ヅァンヅゥ1基は30,000マンギラートの約束でショ?」

「うーんコレは貴重な永活剤メタンフェタミンなんですけどねぇ・・・末端価格で言えば、6,000,000マンギラートはくだりませんよぉ」


とぼける足利に対し”先生シェンション”が激昂する。


「哦、别傻了 足利ッ!!!」


先生シェンション”の懐から得物が飛び出そうという時、操舵室の扉を叩くものがいた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る