第2話「新入部員」
それから3ヶ月。翔太は和楽器への熱を忘れていた。
「あー、暇だなぁ~」
翼も忘れてしまっただろう、そう思っていた。
うとうとしていたそのとき、バーンと大きな音を立ててトビラが開いた。
「貴方が和楽器部の部長さん?」
仁王立ちして女子が話しかけてきた。
「お前、誰だよ」
翔太はそっけなく話しかけた。
女子は紙を渡して言った。
「入部希望の1-C、柳葉琴音よ」
「入部希望?いいけど。俺は1-A、滝沢翔太」
翔太は答えた。
『いっそのこと、こいつに部長押し付けて和楽器部をやめようかな…』
と、翔太は思ったが、
「和楽器部を続けてくれ」
と言っていた翼のことがどうしても忘れられないのだ。
『ま、続けるか』
翔太は心の中で思いが変わった。
「で、何の楽器があるの?」
琴音は興味津々に聞いてくる。
「和楽器全般、何でもあるよ」
翔太は答えた。
「ちなみに、俺は尺八」
「私はお箏にする!」
琴音はまるで人の話を聞いていなかったように大きな声で言う。
「話を聞けよ、ったく」
「聞いてたよ~。尺八でしょ?」
そのとき翔太は、
『こいつ、案外聞いてるじゃん。まあ、大丈夫か』
と思った。
「で、部員はあんただけなの?」
琴音は質問した。
「俺だけ。前はもう一人いたけどな」
「ふーん、そうなんだ…」
琴音は考えながら言う。
「ねえねえ、私に部長変わってよ」
「んー、様子をみて、大丈夫そうだったらそのときは変わるよ」
翔太は答えた。けど、心の中にはモヤモヤが、残っていた。
『本当に変わってしまってよいのだろうか。此処で変わったら終わってしまいそう』
やはり、翔太は考えが変わった。
「やっぱり、部長は譲れない」
「そう。ならいいわ」
琴音はすっぱりあきらめた。案外こういう性格なのだろう。
「ねえ、この和楽器部って、何の楽器があるの?」
「箏(13弦、17弦)、三味線、尺八、和太鼓だよ」
翔太は丁寧に説明した。
すると、琴音は
「なら、宣伝してもっと部員を集めるわ」
「だったら、頼んだ」
翔太は、
『やけにやる気満々だなぁ』
と思っていた。
〜次の日〜
1-Cの教室では…
琴音「ねえ、遥。遥は部活もう決めた?」
遥「ううん。まだだよ?」
琴音「だったら和楽器部に入りなよ!」
遥「和楽器?もちろん入りたいけどやったことないよ」
琴音「大丈夫だって!私が教えてあげるから」
遥「じゃあ、入りたいな」
「じゃあ、放課後早速案内するね!」
琴音は言った。
そして、放課後になった。
バーンとけたたましい音を立てて和楽器部のドアが開いた。
「翔太!進入部員連れてきたよ!」
「ああ、ありがとう」
翔太はお礼をいい、再び練習し始めた。
「あ、あの!1-C、坂口遥です。これから、よろしくお願いします」
「うん…よろしく」
翔太はそっぽを向いていたけれど、それだけ熱心になったのだろう。
とりあえず、この3人でがんばっていくことを翔太たちは決めたようだ。
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