第11話

ひそひそ…

廊下を歩いているとやけに視線を感じる

いや、いつも見られているがいつもの視線とは何かが違う

「おはよ、葵」

「あ、ああ」

「どうかしたのか?」

「おまえ知らないのか…?」

「?」

「実は…」

葵いわく、昨日の夜学校の多くの生徒にメールが送られてきたらしいのだ。その内容は、

『天童響は、天瀬セラの弱みを握り脅迫している』というものらしい

「誰がそんな…もしかして…」

「心当たりあるのか?」

「2日くらい前にセラにふられた奴がいたんだ。そいつがセラを助けてやる、とか言ってたんだ」

「そうか…薫に頼んでちょっと調べてみるよ」

薫とは葵の妹だ。小さい時は3人で一緒に遊んだりしていたが、最近は忙しくてあまり会っていない

「ああ、薫ちゃんにもよろしく言っといてくれ…」

……………………………………………………………………………………

昼休みになった


「天童くん大丈夫だった!?」

「ああ、うん、それよりも今日はなんで屋上じゃないの?」

ホッとしているセラに問いかける

「私たちが毎日屋上でご飯食べてるってバレたからみんなが…」

「まあ、そりゃ俺みたいなのが彼氏とか誰も信じないよな…」

「みたいなのって言っちゃダメ!響くんはカッコいいし、優しいし…」

恥じらいながらセラが言った。

「ごめん、気をつけるよ…」

「うん!」

「ねえセラ‥」

と言いかけた瞬間、何かが飛んできて、

ガンッと俺の頭に激痛がはしった

「え?」

セラは何が起こったか分からないという表情をしていた

そして俺は意識を失った。

………………………………………………………………

「ここは…どこだ?」

どうやら気を失っていたようだ

「ああ…」

思い出した…誰かが投げたものが当たったんだ…

俺の隣には1通の手紙が置いてあった

『響くんへ

ごめんね、やっぱり迷惑かけちゃった…

ほんとは直接言いたかったけど、それだときっと泣いちゃうから…

別れるのは嫌だけど響くんが傷つけられるのはもっと嫌なの…

だからごめんね。短い間だったけど楽しかったよ』

セラからの手紙を読み終えて、きっと今セラは苦しんでる…きっと泣いている…

そう思うと涙が溢れてきた

「セラ…まってて…」

そう言って俺は走り出した

‥‥‥……………………………………………………………

「やっぱりここか…」

「響くん!?…手紙読んでくれたよね…?」

「うん…読んだ」

「じゃあ…」

嫌だ…絶対に別れたくない…他の奴らになんと言われてもいい、絶対にセラを離したくない!

「セラ…それは本当に思っていることなのか!?」

「うん…そうだよ」

「セラは僕のことが嫌いなの?」

「ううん…大好き…」

「僕と一緒にいたくないの?」

「……一緒にいたい…うぅ…」

セラは泣き出した

「周りの奴らになんて思われてもいい!俺はおまえのことが好きだ!」

「うん…うん……」

「天野セラさん…俺と…いつまでも一緒にいてくれませんか…。」

伝えたいことは全部言った。

これでダメならきっぱりと諦めよう…いや、多分未練しかないだろうが…

「はい…一緒に…響くんと一緒に居させてください…!」

「おう…!当たり前だろ…」

ギュッとセラを抱きしめる

「はい…ありがとうございます…」

……………………………………………………………………………………

抱き合って十分くらいした頃

『みんなこれでもまだ信じないの?これでも信じないなんて馬鹿じゃないの?』

「「え?」」

まさか…

『響くんと天瀬さんごめんねー、さっきの全部盗聴してこっちで流してた』

「「え。」」

この声は薫か…あいつまじか…

『ちなみに今日休みの人いないから全校生徒と先生に聞かれてるよー』

チラッとセラを見る。

あ、りんごみたいになってる…

『まあ、とりあえず今のを信じるか信じないかは自分で判断すれば?』

そう言って放送が終わった

「…戻るか?」

「…そうですね」

教室にどんな顔していけばいいんだろ…

…………………………………………………………………………

「「「「ごめんなさい!!」」」」

クラスのみんなから謝られた。

「大丈夫だから!ね?」

「おう」

葵がゲタゲタと笑ってる…きっとこいつがみんなに何か言ったんだろ

「…おい、葵なんかやったのか?」

「ああ、放送の後にちょっと喝を入れただけだな」

「おまえ…まあありがとな…」

今日くらいは礼を言っとくか…

「!?ひ、響じゃない!?」

「響だよ…」

はあ…やっぱりアホだな…

「まああんなもん聞かされたらな…」

「?」

「いやなんでもない、まあカッコよかったぜ!」

「へいへい」

「やっぱりいつもの響だな!」

そう言って葵はまた笑った

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