第4話

「おはよ、葵…」

「お、おう、どうしたんだそんな顔して?」

「今日の朝も起こしにきたんだよ…」

「それは、良かったじゃないか」

「どこがだよ…」

「まあ冗談はおいておいて、昨日はどうだったんだ?」

「うーん…まあまあだったよ」

「おお、そうか…良かったな!」

うっぜぇ…ニヤニヤしてこっちみんなよ…

……………………………………………………………………………………

「天童くんいる!?」

はぁ…やっぱりきたか…

「ここにいるよ…」

ん?青いのやつなんでそんなにびっくりしているんだ?

「あ、天童くん!今日は屋上で食べよ!」

「えぇ…わかったよ」

「じゃあ行こ!あ、氷室くんじゃあね!」

「おう!ってもういない…てか昨日何があったんだ?」

……………………………………………………………………………………

「ちょ、ストォォォップ!天瀬さんストップ!」

「え、どうしたの?天童くん」

「引っ張らないで!?」

「あぁ、ごめん!」

「ふぅ…自分で行くから大丈夫だよ…」

「昨日は行きたがらなかったのに、少しは私のことを知ってくれたんですか!?」

「どうせ、行きたがらなくても無理やり連れて行くじゃん…」

「はい、そうですね!」

「なんで嬉しそうなの!?」

「だって天童くんがちょっとでも私のことを知ってくれて嬉しくて///」

よく言うよ…嘘告のくせに…

「ふーん」

胸のモヤモヤに疑問を抱えながら誤魔化すように返事をする

「私、屋上って初めてはいるの!」

「そうなの?」

「天童くんは?」

「僕は葵と何回か入ったことあるかな」

「えー…」

「なんで不満そうなんだよ…」

「だって天童くんの初めてをもらいたかったんだもん…」

「天瀬さんその言い方ダメだから!?」

「え、あ!」

天瀬さんはハッとして、みるみる赤に染まっていき

「そ、そんなつもりじゃないから!」

「はぁ……」

もうダメだこの人…

「さて、お弁当食べようか!」

「うん、そうだね」

「……あれ?」

「どうしたの?天瀬さん」

なぜか嫌の予感がする…

「ないの…」

「え?」

「お箸が1つしかないの…」

「えぇ…じゃあ僕は食べないからいいよ…」

「そんなのだめだよ!」

「じゃあどうするのさ…」

「一緒のお箸を使えばいいじゃないですか!?」

「いやだだよ…」

グルグルグル〜

「でも体は正直だよ?」

「うぅ…わかったよ…」

………………………………………………………………………

「は、はい、あ〜ん…」

男子が女子にされて嬉しいことのトップ3に入る「あ〜ん」が今まさに行われようとしている。

「ね、ねえ天瀬さん、僕は自分で食べれるよ?」

「天童くん、あ〜ん!」

「はぁ…わかったよ」

パクっと卵焼きを食べた、前はおいしかったのに今は恥ずかしさのあまり味がしない。

「どうしたの?」

「いや、天童くんが食べてくれると思わなかったから…」

「じゃあやらないでよ…」

「じゃあ次は天童くんが食べさせてよ!」

えぇ…そんなに明るい目で見ないでよ…そんな目で見られたら断れないじゃないか…

僕は無言で可愛いタコさんウィンナーを差し出す。天瀬さんはそれをパクりと食べた。

「お、おいしいね!?」

(やばいやばい……天童くんに食べさせてもらった!は、はずかしいよぉ〜!味なんてわかるわけないじゃん!)

「そ、そうだね!?」

(なにこれ、やる方もすっごい恥ずかしいじゃん!天瀬さんさっき普通にやってたよ

ね!?)

2人はこの後も無言で交互に食べさせあいながら、昼休みを終えた。


このあとしばらくするまで、顔を合わせることができなかったのはいうまでもないだろう

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