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 今日は学校が休みだった。朝から姉と二人で墓参りに出かけた。

 山中にある墓で、結構歩く。姉は意外と足腰が強いからスイスイ登るが、僕は足を棒にしながら亀の歩みで登って行った。

「がんばれー」

坂の上から姉がエールを送ってきた。


 掃除をして、花を供えて、線香を立てて、二人で両手を合わせた。

「あれからもう三年経つんだね…」

姉がしみじみ言った。

「あの子野球が好きだったよね、生きてたら今でも野球続けてたかな」

「そうだね。地区予選の決勝で大活躍して沢山点を取るんだけど、結局自分のエラーで逆転負けして大泣きするかも」

「なにそれ」

 姉が笑った。


 帰り道。姉と並んで歩く。

 ふと、後ろから視線を感じた。すぐに振り返って見た。林の中にフードを被った人影が居た。

「ごめん、忘れ物した!」

「えっ?」

「僕は取りに戻るから、先帰ってて!絶対待たないで!」

「な、なに!?」

 困惑する姉を置き去りにして走り出す。フード頭は林の奥に消えていた。

 追いかけて林の中を走って少しすると、小さなお社がある、木々のない開けた場所に出た。フード頭はその真ん中にいた。ジーンズにフード付きパーカー姿だった。僕はフード頭と対面した。 勇んで追って来たものの、会ってどうするとか全くノープランだった僕は、混乱して立ち尽くした。

 するとフード頭が話し始めた。

「あたしはよォー…頭悪りぃからさァ。効率的な立ち回りなんて全然わかんねェけどよォ…。一人んなったのは好都合ォ…」

 かしょっ。フード頭の右手から何かが伸びた。テレビで見たことがある、特殊警棒とかいう武器だ。

「てめェはいっぺんここで寝とけ!!」

 いきなり殴りかかってきた。

 僕は避けようとしたが、間に合わないのは火を見るより明らかだった。

(やられる…!)

 受けるだろう衝撃に身を硬くしたその時、

(あれ?)

僕の横を警棒が通り過ぎた。

 フード頭が外したのではない。僕が避けたのだ。

「避けんなァ!」

 続けて放たれる二撃目も、後ろにステップして躱した。距離を取って、考える余地ができた。

(これって、もしかして)

 フード頭が次の攻撃を放ってきた。落ち着いて観察する。攻撃が迫る。しかしそれはイメージ映像だった。僕はそのイメージを避けるように動いた。するとフード頭は後からイメージ通りの動きで攻撃してきた。当然僕は既にそこにいない。

 これはまるで……。

(少し先の未来が見えてる……!?)

 どうやら間違いなかった。するとフード頭も何かに気づいたらしい。

「てめェ…『予知夢』使ってんなァ…?」

 そう呟くと、

「だったらコレだァ!」

 次を仕掛けてきた。僕に迫る。

僕は意識を集中させてイメージを見た。するととんでもないものが見えた。フード頭は空中に跳び上がって、何もない空間を蹴ってさらに跳び、僕の頭上から攻撃するというのだ。

(これが人間の動きなのか!?)

 しかしやるしかない。僕は構えた。

「だりャァ!」

 フード頭は空中ジャンプして僕の頭上から襲いかかってきた。

 僕はイメージを紙一重で躱し、空中に拳を置いておいた。フライボールは取れなくても、イメージに従えば簡単にできる。

 そしてフード頭が降ってきて、攻撃を外し、僕の拳が奴の足に当たって重心をずらし、フード頭は頭から地面に突っ込んだ。

「きャん!」

 なんか仔犬みたいな悲鳴が聞こえた。

 フード頭のフードが外れていた。フード頭は僕と同い年くらいの女の子だった。

「………痛ッッつううゥゥ………!」

 女の子は悶絶している。予知してみても、しばらく起き上がる気配は無い。

 今のうちに僕は逃げ出した。

「……ッ待てこらァ!」

 僕の背中に女の子が叫んでいたが、僕は無視して林を抜け山を降りた。


 その夜、僕はベッドで考えていた。

 何だったんだ一体…?

謎の襲撃者の正体も目的も、自らの身に起こった変化も、何一つ分からなかった。

 だけど一つ分かる事がある。今の世界を守るためなら、僕はどんなことでもするだろう。

 決意を胸にしながら、僕は眠りについた。

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