舐め合い
ふじはら葉月
...
ある日、私は彼女に出会った。
彼女は薄汚れた空き箱の中で鳴いていた。抱き上げると、彼女を濡らしていた雨水が私の手を汚した。
一生懸命に話し掛けてくる彼女の冷たい背中を、私はただ黙って撫でていた。
ある日、私はひとまわり小さくなった彼女を見かけた。
彼女は傷だらけだった。抱き上げると、手のひらから手首へ生温いものがつたった。
思わず眉間に力が入った私を、彼女は不思議そうに見つめていた。
ある日、私は自分のとなりで眠る彼を眺めていた。
彼は出会った時からずっと、相当な口下手だった。
今朝もきっと、挨拶のひとつもせず私を抱き上げて、とびきり下手糞に微笑むのだろう。
舐め合い ふじはら葉月 @hazuki-0823
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