第1話 日常から非日常へ
「あーあ、すっかり暗くなっちまったな」
委員会の仕事が長引き学校から出るときには既に6時を過ぎていた。
学校から家までの道は基本的に大通りなのだが遅くなっていることもあって近道をするために人通りの少ない道を通って帰ることにのだ。
とはいえ、閑静な住宅街の中ではあるので別に何もないわけでもなく、両脇の家の電気はついていて別に暗い訳ではない。何かあったとしても大声で叫べばすぐに気がついてくれるはずだ。
車も通らないのでついつい歩きながらスマホでニュースを見ていると一つの記事に目を引かれた。
「なになに…、今日箸野駅近くの公園で悪魔と思わしき、人物が魔法使いと交戦?時間的に俺が電車に乗った直後じゃないか」
昔は妖怪しかいなかったらしいがグローバル化の影響で海外から悪魔が入ってくるようになったらしい。
「ん?」
不意に後ろから何かが近づいてくることに気がついた。何か禍々しい何かが。
俺はホラーが苦手でゲームもアニメも映画もダメだ。もう高校2年生だが、夜にトイレに行く時は早足で向かうぐらい苦手だ。
恐る恐る振り向くと、其処にはいくつもの黒い手が蠢き絡み合いながらこちらに向かって猛スピードで近づいてきていた。
「も、もしかして今朝の悪魔なのか?アレは…」
確か度々、悪魔が人間を襲うことがあるとは知っていたが俺自身がその当事者になるとは想像もしていなかった。
俺はカバンを投げ捨て慌てて逃げ出した。大声で助けを呼ぶも、先程まで電気がついていたはずの両脇の家の電気は消えていて、人の気配がなく、どれほど走っても景色変わることがなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
運動部でもない俺は全力で走れば1分もしないで疲れ果ててしまう。気付けば、黒い手が俺のすぐ近くまで来ていた。
「やだ、やだ。死にたく無い!死にたく無い!」
無情にも何百とも蠢く黒い手は俺を掴み、口を開けさせるとそのまま口から体の中に入っていった。
「うぐっ…、だ…れ、かぁ」
凄まじい苦しみが体を襲い、そのまま恐怖で意識を失った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「…ん、ここは…」
気がつくと俺は家の近くの公園のベンチに座っていた。よりによって今朝、悪魔が出現した公園だ。ベンチの隣には俺が投げ捨てたはずのカバンが置いてある。
「夢、なのか…」
体に触れてみるも特に異常はない。誰もいない夜の公園は薄気味悪く、慌てて公園を飛び出した。
足早に公園をさり家に帰った。家に帰ると何も変わらぬ母親が夕飯を作って待っていた。その瞬間、先程のことが夢だと確信し、俺はいつもどおりに過ごし、眠りについた。
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