6.救い


「あの。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「え?」


少女は泣いていらっしゃる。こんなに周りから陰口を吐かれてしまっては傷つくのも無理はない。

可哀想に。私が力になってあげたい。


「まだ私はあなたの名前を知りません。お話しした人の名前を知らなくて帰らせることは執事の流儀に反します。どうか貴方様のお名前を教えてくださりませんか?」

「な、何で私なんかの」

「一人の泣いていらっしゃる少女ですもの」

「泣いてない」

「でしたらこちらのハンカチで涙を拭ってください。泣いている姿を見たくありません」

「もう!何で貴方は私を追いかけてくるのよ。私は平民よ。貴方なんかに優しいされたくない」

「私も生まれは平民です。貴方様の気持ちはあまりわからないかもしれないです。ですが貴方の力になることはできます」

「別に頼ってない」

「貴方様が頼りたい時にいつでも頼ってください。こんな私ですが少しはお気持ちが楽になるかと思います」

「わかった。貴方がそんなに頼って欲しいなら頼ってあげるわ」

「ありがたきお言葉」

「私はエーシア。それで貴方は?」

「アレス・エヴァンガルド。よろしくお願いしますミスエーシア」

「エヴァンガルド!?エヴァンガルド家って王女様の名前で、、、、、って貴方王族!?」


エーシアは驚いた表情で私に詰め寄ってきました。


「一応そのようなことになっております。王女様に拾われて形上ではあるのですが家名をもらえることになりました。ですが、王宮魔法士にならなければ縁を切られてしまいます。そのために私はここへ来ました」

「そ、そうなんだ。へぇー。貴方やっぱりお金持ちなのね」

「どのあたりがお金持ちでお金持ちではないのかわかりかねます」

「確かにアレスはそんな服で来るくらい頭抜けてるもんね」

「そうかもしれないですね。王女様によく叱られました。それにエーシアが元気になってくれて嬉しいです」

「べ、別に。でもありがとね」

「いえ。お力になれたのなら嬉しい限りでございます。では私は着替えてきますので、また後でお会いしましょう」

「そうよ早く着替えてきなさい。ま、また後で...」


颯爽とアレスは行ってしまった。


「何なのあいつ調子狂うじゃない...。でも凄くいい奴だった。それにイケメン過ぎ」


私はこの時アレスに救われた。

身分関係なく話してくれて、自分で言うのも恥ずかしいけどちゃんと女の子として扱ってくれて嬉しかった。こんなことしてくれる人なんて今まで居なかったから私はこの学園で生きていけるような気がする。それにアレスはお金持ちだし何かと天然なところもあるし、頼りがいがあるし、イケメンだし。もしかしたら貴族なんかと婚約しなくても良いかも知れない。全てアレスに頼れば何でも解決してくれそうな雰囲気があった。

別に少し優しくされて好きになるなんて軽い女じゃないけど一瞬アレスが牢獄にいる王女を助けるみたいな王子様に見えたのは黙っておく。

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