5.平民

セーリア。良い名前です。

私は彼女とお別れし歩みを進めます。

それにしても何故私に声をかけてくださったのでしょうか?それにハンバーグを作ってくださると言ってくださいました。とても嬉しかったのですが、私なんかに良かったのでしょうか。

でも、有り難く好意に甘えさせていただきます。

ハンバーグ楽しみです!

そして、最初に学長から新入生にお話があるとのことなので私は学園の校舎へと入り体育館へと行きます。

体育館は城にあった王女様のホールよりも広く、二階には席があり教壇が見渡せるような作りです。

私が入った後も、沢山の少年少女の生徒たちが入り、話し声などが体育館中に飛び交っています。とても賑やかな感じで楽しそうです。私も混ざりたいのですが、少し緊張します。


「ねぇねぇ。なんであんた変な服着てるの?」


突然声をかけてきた少女は茶髪でくっきりとした黒目で私を不思議でならない様な感じで見てきます。


「この服に何か問題がお有りですか?」

「大有りよ。周りを見渡してみなさい?あんただけが違う服なのよ。目立って目立って仕方ないわ」

「確かに皆さんこの学園の制服を着てらっしゃいます。私も着替えた方がよろしいのでしょうか?」

「あんた変な奴ね。別に私は理由を聞いただけだし、勝手にすれば良いわ。それであんた金持ちなの?」

「何故そのようなことを聞くのですか?」

「色々あるのよ。それにあんた服装がお金持ちな感じだもん。絶対持っているわ!さぁ、言ってみなさい?」


王女様に金貨を袋一杯と今まで王女様の執事としていただいたお金はありますけど、それはお金持ちと言ってよろしいのでしょうか?


「お金持ちと言われましても分かりかねます」

「そ、そう。な、なら親は何してるの?」

「私の親は行方が分かっていません。死んでいるのか生きているのか分からないです。でも、私は今まで大事な人に拾われて大変幸せに過ごしていました」

「へー。あんた金持ちじゃないんだ。ならいいわ。悪いことを聞いたわね」


私の発言を聞くなりその少女は踵を返して後ろの方へと下がっていきました。一体なんだったんでしょうか。


「あの子平民だってー」

「平民が何でこんな所に」

「さっきアレス様とお話ししてましたわよ」

「気安くアレス様に話しかけないで欲しいわ」

「アレス様が汚れてしまいますわ」

「平民が魔法を使うなよ」

「魔法が汚れてしまいますわ」

「私たちと並ばないで欲しいわ」

「平民が居ていい場所ではないわ」


少女の周りから囁き声が聞こえきて気になります。あれは人を見下す侮蔑の視線だと言うことはわかります。人は何故そのように差別を行うのでしょうか?私は勝手に追いかけてしまいます。



私は醜い。平民だからって馬鹿にされて周りからは蔑まれて陰口を吐かれる。ふざけんじゃないわ。私だって好きに生きたって良いじゃない。でも、、、でも、、、親からは

「魔法学園に入学決まったってー?」

「信じられないわ!おめでとエーシア!これであなたは貴族様と婚約できるかも知れないわ!」

「絶対見つけるのよ!」

「頑張れエーシア」

「貴族になりなさい!」


そんなの知らないわ。身分何てどうでも良いのに、、、なんで、唯一の救いだった両親までそんなこと言うの。もう嫌だ。

周りがうるさい。

親から見捨てられないために貴族に好かれないといけない。お金が有れば貴族なんかと婚約しなくても良いかもしれなかったのに。

お金が欲しい。今の人が1番間抜けそうだったから声かけたのにお金持ってないなんて損した。これからはもっと慎重に吟味していかないと、そうして貴族なんかとは婚約しなくても済むはず、、、。

周りがうるさい。

周りがうるさい。

平民、、、魔法、、、汚れる。それに蔑んだ目。私本当にこの学園で過ごせるのだろうか。胸が痛い。誰か助けて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る