Report2: 邂逅
――裏の世界で語り継がれる伝説的な話で、あらゆる事件を解決に導く凄腕の傭兵集団が居たらしい。
人生を、事件を、そして時には地形をリセットするかのようなやり口から、人は彼らを《リセッターズ》と呼んだ。
◇◇◇
《あなたの人生、リセットします》
そんな台詞をどこかで聞いた覚えがあった。インターネットのスレッドだったか、ドラマのワンシーンだったかは覚えていない。有象無象の台詞と同じで、すぐにそれは頭のどこかへ消えて行った。
後になって考えてみれば、何処かで《リセッターズ》と呼ばれる彼らの情報を認知していたのかもしれない。
何処かのオフィスだろうか。ソファとローテーブル、事務机。それ以外は何も無い、オフィスと呼ぶには余りにも粗末な部屋で、俺はスーツのまま寝かされていたようだ。
空調が効いているのか、不快さは感じられない。
首を動かして見れば、窓ガラスがビル群と青い空を切り抜いており、見知った名前の銀行やデパートが点在している。それ故、ここは日本なのだと解した。
時間がどれだけ経過したかは分からないが、外の様子から考えるに、今は昼間のようだ。
生きている。率直な感想はそれだった。死んだとばかり思った。
夢とは思えない。しかし、線路に転落した後の記憶も無い。怪我した頬を擦りながら、俺は起き上がった。
通勤カバンが見当たらないな……。何処かに落としてきたのかもしれない。
「目を覚ましたか」
声の主を見やると、そこには凛々しい顔立ちの女が立っていた。まるでレモンティーのように艶やかな金髪は肩口くらいまでの長さで、緩くカーブを描いている。
四肢はスラリと長く女優のようで、ガーネットの瞳には優しさを感じるが、同時に冷たさも感じた。
口は少し笑っているような気もする。だが、表情が読めない。どこか狂気を内包しているような、そんな印象を受けた。
上半身は白いタンクの上から黒のジャケットを羽織っており、下はインディゴカラーのパンツを穿いている。可愛いというより、クールと評されるタイプだろう。
……人形のように整った造形だ。数秒、俺は目を奪われてしまっていた。
「ホームから落下して、死んだと思ったか? 安心しろ、私が助けた」
目が合った。それで口を開こうとしたら、金髪女が先に喋り出した。流暢な日本語である。
まるで俺の疑問を一行で全て解決するような、簡潔な言い回しだった。
「そう、だったんですね……ありがとうございます……」
口調からして、竹を割ったような性格だと知れた。もしくは男勝りとでも言うのだろうか。
金髪女は腰に手を当てて、自信に満ち溢れた様子で俺を見ている。
とりあえず俺は、目を逸らしながら金髪女に礼を述べたのだった。
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