第31話 その後
陽が沈み、外も暗くなってきた頃。
夕食を食べ終え、なんとなくテレビを見て暇を潰していた。
「はぁ……」
見ているのは、本日2回目の報道番組だ。
言い方が違うだけで、内容はほとんど変わっていない。
それなら、番組を変えればいいだけの話なのだが、生憎、今の時間帯はこれと言って面白いものがやっていない。
テレビも飽き始めた俺は、リモコンのボタンを片っ端から押していき、番組を変えまくって遊んでいた。
「これ……意外とやっちゃうよな」
強く押しすぎてリモコンが壊れるのではないかと心配になったが、俺の手は止まることなくボタンを押し続けた。
その時、ふと、番組を変えるのをやめ、気づいたら俺はテレビに見入っていた。
テレビに写っているのは、ある学生の数と年々増え続ける自殺者を表したグラフだった。
今回、自殺に成功したのは高校3年生の女性だった……。
自室で首を吊っている所を家族が発見したらしい。
女性の両親がテレビに映ると泣きながら、娘の事について話している映像が流れた。
あの両親達からしたら、悲しくて仕方が無い事かもしれないが、俺は「可哀想だな」と思うだけ。
……それが当たり前だ。
会ったことも話したこともない人、ましてや著名人でもない人の死を毎回、想っている人間なんて絶対にいない……。
絶対に―――。
絶対に――――――。
自殺に成功したあの女性には、悲しみ、涙を流してくれる人がいる。
でも、俺には産んでくれて、育ててくれた人もいなければ、泣いてくれる人もいない。
そんな現実を突きつけられた気がして――。
「あっ……」
気がついたら、俺の頬は涙で濡れていた。
死にたいから、消えたいから、人生を終わりにしたいから、俺は死ぬことを選んだ。
だって、俺が死んでも、泣いてくれる人なんていない。
それに気づいた、気づいてしまった。
少し前までは、こんな事を考えたりしなかったのに今では考えるようになってしまった。
『私にとっては1日1日がとても大切なの』
出会ったばかりの頃、花優が言っていた言葉を思い出す。
花優は、俺とは全く反対の考えで、生きたいと思っている。それなのに俺は、死にたいとか、平気で花優に言ってしまった。
……それでも花優は怒らず、俺の話を聞いてくれた。
――この病院に来てから。
――そして、花優に、出会ってから。
――俺の考えは前向きになっていく気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます