第136話 私がLです

「ああもう!頭を上げてください」

 俺はそう言ってリューバさんを立たせる。

「それではヒノモトの為に通訳をしてくれるのでござるか!?」

 立ち上がったリューバさんはテンション高めに聞いてくるが。

「カリンはどうだ?行けそうかい?俺からもお願いしたいんだけど」

 俺がそういうとカリンは。

『お兄ちゃんのお願いだから頑張りたいけど私にそんな大役が務まるかなぁ?』

 と不安げな顔だ。

『カリンが無理ならボクが頑張っても良いんだけど?』

 と、ひょっこり顔を出すラビ。

「おお!この幼児おさなごも通訳が出来るのであるか!?しかし通訳でござると表に出るにはちと幼すぎではござらんか?」

 そういうリューバさんに。

『それはカリンでも一緒だと思うなー、だからさ』

 ラビはポンッと雪兎モードになると俺の懐に入っていき。

『ボクがこうやって通訳するからヨーイチの魔法って事にすればいいよ』

 おお!ナイスアイデア!

 するとカリンが。

『私もお兄ちゃんの役に立ちたかったなぁ...』

 と寂しそうな顔をするので。

「いや、カリンには大事な役目があるぞ」

 と目を合わせて言った。


「おーい!帰ってこーい」

 俺はリューバさんの頬をペシペシしながらいうと。

「はっ!今のは一体!?」

 と正気を取り戻した。

 ラビの変化を目の当たりにしてからフリーズしてたようだ。

「ラビは魔物だけど俺たちと意思の疎通はできるし信頼できる仲間なんだ、通訳魔法も使える」

 俺がそういうとポンッとお姉さんモードになって。

『あとヨーイチのつがい候補でもあるからよろしく』

 という言葉にリューバさんの俺のことを見る目が覚めたものになる。

「まぁコイツが言ってるだけだから、でも信頼は出来ますから」

 と俺が取り繕うと。

『へー、ヨーイチはボクの事嫌いなんだ?』

 と、お姉さんモードのまま悲しそうな顔をする。

「嫌いだったら一緒に居ねーよ」

 とオードリーの漫才のように顔を見合わせてへへへと笑い合うと。

「よ、洋一殿の趣味はともかく信頼できるお方というのは分かり申した」

 おい趣味とかいうな。

『で、お兄ちゃん私の役目っていうのは?』

 カリンがそう聞くので俺は。

「会談は俺とラビでどうにかするからカリンにはウォトカの同行人、多分役人か騎士みたいなのがついてくると思うんだ。

 そいつらの会話を聞いておいてもらいたい」

 おそらく交渉役は腹芸に秀でた奴がやってくるだろうけど。

「そいつらの会話の中にウォトカの本音が漏れるかもしれないからな。

 俺が通訳でございと出ていけば他に言葉がわかるやつが居るとは警戒しない可能性が高いだろう」

 という俺の言葉に。

「はぁ...頭脳戦でござるなぁ...。

 洋一殿は軍師の経験がお有りで?」

 そう聞かれたので。

「俺の出身地では物語がたくさんあってそういう話も多いんですよ。

 ささ、みんなが酒を買ってきてくれたのでパーティを始めましょう」

 俺は出汁が冷める前にとパーティの開会を宣言するのだった、Web小説ではよくある話だろ?

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