第134話 豊臣秀吉がまだ木下藤吉郎だった頃

「本当に申し訳ござらぬ!」

 正気に戻ったリューバさんはいきなり土下座をし始めた。

「あーしだったからよかったものの他の子だったら避けきれず...メリルは避けれるけど、大怪我か命の危険があったんだからね!」

 ヤマンバに変身した戻ったマイさんはお怒りだが俺の読みだと他の子には切りかかって無いんじゃないかと思うんだけど。

「食事にお呼びいただいた上にこの狼藉、拙者いっそこの場で腹を...」

 と思い詰めた表情で刀に手をかけようとするので。

「わー!待った待った!」

 そう言って刀を奪い取る。

「事情があるんでしょ?聞かせて下さいよ!」

 俺がそう言うとリューバさんはポツリポツリと話始めた...。


 ...


 時は今から20年ほど前、ヒノモトの国の村の外れ、仲良く歩く姉弟の姿があった。

「姉上!この調子なれば明るいうちに帰れそうでございますね!」

 齢とおほどの利発そうな少年、サガモドリューバの幼き頃の姿である。

「そうですねリューバ、早く村に戻りましょう」

 まもなく二十歳はたちを迎えようとする美しき姉、その名はオトメ。

 その姿はマイの真の姿に酷似していた。

 お使いで別の村に行っていた姉弟は用事を済ませ村の近くまで帰ってきていたのである。

 楽しげに会話をしながら歩く二人に不穏な影が近づく!


「姉上!姉上!」

 突如現れた魔物がオトメに襲いかかる!

 ひー、ふー、みー、三匹の魔物は異様に暗い肌と真っ白な髪を振り乱して襲って来た、リューバも聞いたことがある、山姥という魔物だ!

「リューバ!逃げるのです!」

 咄嗟に弟を突き飛ばした姉はあっという間に魔物に攫われてしまった!

「姉上ー!」

 かくして仲の良かった姉弟は離れ離れになってしまったのであった...。


 ...


 やっぱりそう言う事情か...と俺は納得しつつも納得がいかない事があった。

 なんでリューバさん講談師みたいな口調で説明してんの!?


「うっ...うっ...」

 そしてすすり泣くような声...これはもしかして...。

 マイさんはガバッと顔を上げて。

「リューバっち!大変だったんだね!今すぐお姉さんを助けに行こう!あーしもヤマンバだけどあーしはいいヤマンバだから!あーし手伝うよ!」

 やっぱりアイさんの話聞いた時と同じ展開か!

「待って!マイさん落ち着いて!これ20年前の話だから!」

 今にも走り出しそうなマイさんを止める俺。

「そうでござる、お気持ちはありがたいのでござるが今駆け出してももう遅いのでござるよ...」

 リューバさんも暗い顔になってしまった。


「姉を失った拙者はいつか姉と助けようと剣の腕を磨いたのでござる、しかし姉の情報はもちろん山姥の情報もそれからパッタリと出てこなくなりはや20年。

 マイ殿の化粧が山姥に似ておったので取り乱してしまったでござる、誠にかたじけない」

 リューバさんは再度頭を下げる。

「良いって!あーしは気にしてないから!」

 マイさんはそう言って伸ばした手をパタパタと振る。

「まぁ焦っても仕方ないなら今日はご飯にしよう!そのために呼んだんだから」

 俺はそう言ってリューバさんを奥のリビングへと案内する。

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