第131話 youは何しに日本に?

『お兄ちゃんおはよー』

 朝になりカリンに起こされた俺は昨夜のことを思い出す。

 夢...じゃないよな?

 思わず自分の唇に手を当てた。

『どうしたの?何かあった?』

 そう尋ねてくるカリンに。

「いや、なんでもないよ。

 おはようカリン」

 そう言って頭を撫ぜベッドを出る。

 なんだかんだ言ってもアイさん以外は数年で倫理的ストライクゾーンに入っちまうんだよなぁ...ちゃんと考えなきゃ。

 そう思いながら顔を洗って身支度を整える。

 船に乗るまであと3日、みんなのことも大事だけどまずは魔王討伐の事を考えなきゃ。


 朝食を軽く済ませた俺たちは食料の買い出しと情報収集。

 サンブックまでの航路がおおよそ何日かとか乗せてもらうのはどうすれば良いかなどやるべきことはやっておかないとな。

 情報収集は俺とカリン、そして交渉役のマリアで残りのみんなは買い出しに行ってもらう、何よりマイさんが居ないと大荷物を抱えることになってしまうからね。

『すみませーん、どなたかいらっしゃるかしら?』

 港で聞いたサンブック担当の倉庫にやってきた俺たち、ここにはサンブックの人が一人常駐しているということらしい。

「何でござるかな?おっといかんいかん『何か御用でしょうか』

 んん!?今なんか日本語っぽい言葉が?

 出てきたのはラフな格好をしたおじさん...っていうかほぼ作務衣だよねその服装、あと髷は結ってないけど長髪を一括りにした浪人スタイルって感じ。

『お尋ねしたいのですが3日後の臨時便は帰りは空とお聞きしました、わたくし達をサンブックまで乗せていただけないかと思いまして』

 というマリアの言葉に。

『ほう、あなた方はサンブックに行きたいと仰られるのですね、確かに帰りは空荷の予定ですがなにせ私は現地駐在員、船長に聞いてみないと何とも言えませんね』

 外見にそぐわないやけに丁寧な喋りだ...もしかしたら...。

「カリン、ちょっと通訳無しで話させてくれ」

 俺はそう言って。

「ちょっと良いかな?俺の言葉伝わってる?」

 と言うと。

「おお!この異国の地でもワシの国の言葉がわかるお方がおったとは!拙者感激でござる」

 あ、やっぱこれほぼ日本語じゃねーか。


「改めて、拙者サガモド...ではなくリューバ・サガモドと申す」

 ここでは珍しい俺と同じ黒髪黒目の作務衣のチョンマゲマンはそう名乗った。

「あ、やっぱりサンブックは家名が前に来るんですね、俺は毛利洋一です、よろしく」

 俺が自己紹介を返すとリューバさんは。

「ヨーイチ殿か、見たところ同郷の者に見えるのだがと言うことは違うのだろうな」

 ん?どう言うことだ?

「国の者は自国をヒノモトと呼ぶからな、サンブックは外国の言葉に合わせた対外的な国名なのだ」

 ほほう、それは面白い。

「はるか昔は交流があったらしいのだが我が国は長距離船の技術が失われておってな、それが何年か前マヌジローという者が小舟で流されてこっちの大陸になんとか流れ着いたそうなのだ。

 生きるために必死にこちらの言葉を覚えたマヌジローがヒノモトを説明するために直訳した国名がサンブックというわけだ」

 なるほど、日本とジャパンみたいなもんか。

「そしてこちらで人脈を作りヒノモトに送り届けられたマヌジローとその時使われた長距離船の技術を得て最近やっと国産の船が出来たため定期便が就航しワシが現地駐在員としてやってきたわけだ、構造さえわかればヒノモトのショクニンは腕利きばかりだからな」

 なるほど...ってなんかまんまジョン万次郎みたいな人が居るんだな、名前も似てるし。

「今度来る臨時便も2隻目の長距離船が出来たのでテストを兼ねてやってくるのだ、何故か最近コメの売れ行きもいいからな」

 そんなこんなでリューバさんと話しているうちに意気投合し臨時便が来たら船長に頼んでくれると言う運びになった。

「それでヨーイチ殿、お主は何しにヒノモトに?」

「はい!米に合う料理を求めて!」


 アレ?なんか違ったかもしんない。

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