第130話 噂のキッスをあげる
「う、うん...」
夜中に息苦しさで目が覚める。
目を開けるとアイさんに唇を奪われていた。
「な!?なn」
慌てて飛び起きようとするとアイさんがそっと俺の口を押さえて。
『静かにせい...、
と言われた、言われた!?
俺は横をバッと見たがカリンはすやすやと眠っている。
『ヘヘッボクだよ』
アイさんの胸元には雪兎モードのラビが顔をのぞかせていた。
『すまぬのう、ちとゆっくり話をしたくてな。
ラビに協力を頼んだのじゃ』
「それはわかったけど何って起こし方をするんでむぐっ!」
俺も小声で返すがそれを遮るように再度口付けをされる、って舌!舌入れてくるのか!?
うーうーと声も出せず両手腕枕のために暴れることもできない俺はしばし口内を蹂躙される。
『ぷはっ、何度言ってもお主がわしの欲求を満たしてくれぬからな、子供相手でもキスぐらいならええじゃろ』
そう言って妖艶な笑みを浮かべるアイさんに。
「いや今のは完全に大人のキスだったでしょうが!?話しないならもう寝ますよ!?」
小声ながらもハイテンションでツッコミを入れる俺。
『なーに、話があるのは本当じゃ、それにおぬし“自身”も若干元気になりかけておるでは無いか』
そう言って笑うアイさんに。
「いい加減にしてくれないと怒りますよ?
で、話ってなんです?」
俺は若干の誤魔化しを含めて語気を強める、正直アイさんのキスはめちゃくちゃ上手かったのだ、肉体年齢が幼女でなければおそらく俺は今頃マックスフルパワーになるぐらいに。
『まあええわい、話というのはな...お主一体誰を選ぶつもりじゃ?』
いったい何のことやら...とは思えない。
カリンやメリルからの好意はもちろん感じているしマリアからは直接的に言われているしセリスもそうだろう。
『あ、何考えてるかわかるけどボクもヨーイチと
魔物だけど
お前もか...ラビ。
『まあなんだ、誰か一人を選べなどと言っておるわけではない、ワシらはもう家族みたいなもんじゃし...まぁマイは来たばかりでローズはヨーイチよりもラビのモフモフ目当てじゃろうが...もっと愛してやってもいいと思うのじゃ』
愛する...か、アイさんが言っているのは肉体的なそれの事なんだろう。
精神的に言えばみんなの事が好きだし愛してるとも言えるからな。
「でも難しいんだよ、本当にこんなおっさんを愛してくれているのか信じられないんだ。
たまたまギリ恋愛対象だったのが俺だけでみんなの幸せな将来を妨害してしまうんじゃないか?とかね」
俺が若干伏し目がちに言うとアイさんの顔が再度近づいてきて...。
ゴンッ!
痛っ!何すんの!?
軽くヘッドバットをかまされた。
『全く、異世界人というのはこれじゃから...。
良いか?この世界では一生村から出ないような人間も少なくはない、それじゃと恋愛対象は村の中だけじゃ。
それで少ない選択肢から伴侶を選んだ者をお主は不幸だとでもいうのか!?』
俺はまるで頭を殴られたような衝撃を受けた、いやさっきヘッドバッドは食らったけれどもそういう意味じゃなく。
『選択肢は多くなかったかもしれん、じゃがワシも含めてコイツらはお主を選んだんじゃぞ?それも不幸というのか?』
そっか...それもそうだな。
「わかったよアイさん、俺ちゃんと考えてみるよ」
俺がそう言うとアイさんは。
『残念ながらワシは禁呪のせいでしばらく対象外なのじゃろ?故に今だけはお主を独り占めさせてもらうぞ?』
そう言って今度は優しく口付けをしてきた。
と、ここで終われば綺麗な話だったのだが。
『ずるーい!ボクもー!』
とお子様モードになったラビもキスをしてきた上に舌まで入れてきて鼻息を荒くして勢いでお姉さんモードになってのしかかってくるので流石の俺も腕枕していた両手をそーっと抜いてからトイレに駆け込んだ。
ふう...。
と、トイレから出た俺に。
『ちょっとぐらい楽しめばいいものを...じゃがそういうところが...可愛いわよ、ヨーイチ』
と、いつもと違う口調でからかうアイさんの顔はすごくお姉さんっぽかった。
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