第129話 帰還者遠のく

 夕食は女性陣が作った汁物、シチューの一種かな?

 なんだかんだで日本食というか日本で食べていた食事を振る舞う事が多かったのでこっちの料理をマイさんに教える意味もあったらしい。

 まぁそれでも主食はご飯なんだけどね、せっかく米があるんだもん、炊くよね?

「へー、メインの味付けは塩なんだな」

 なんというか潮汁のような、素材の味がよくわかる味付けだ。

「あーしも驚いた。

 塩だけでこんなに味わい深いんだーって」

 考えてみれば塩分補給や味付け、保存食などほぼ塩でまかなっているわけだからそりゃあれだけ塩も売れるんだなと。

「確かに美味しいんだけどずっと食べてると慣れてきちゃうな」

 という俺の声に。

「あーしも同感、なので美味しいけどここら辺で...」

 と、マイさんがブラックペッパーを取り出す。

 ミル付きのホールペッパーをグルグルと回して粗挽きにしてかけるとほんわりと美味かったスープにビシッと芯が通ってワンランク上の味になる。

『やっぱりコショウは美味いのう、これが気兼ねなく使える時点でお主らおかしいからな?』

 元宮廷魔術師のアイさんに釘を刺されてしまった。

 一般的には高価な香辛料なんだよな、マイさんのおかげで使い放題だし収納すれば勝手にリロードされるけど。

『私はお兄ちゃんたちのおかげで料理がもっと美味しくなるのは嬉しいかな?』

 カリンが素直な感想を言うと。

『あたしも賛成、っていうかヨーイチとマイが居なくなったら香辛料で破産しそうね』

 と、メリルが言えば。

わたくしも家は貧しい方ではありませんがヨーイチ様のお料理からは離れられないと思います』

 というセリスにマリアが。

『まぁわたくしは死ぬまで離れる気はありませんけどね』

 と、妖艶な笑みを浮かべる。

 騎士姉弟がウンウンと頷いてるとラビがガタッと立ち上がって。

『みんなずるい!ボクむれに帰らなきゃいけないのにみんなだけ美味しいご飯が食べられるなんて!』

 そう言った後お姉さんモードに変わって。

『最悪は群を捨てればいいかしら...』

 などと呟く。

「いやいやいやそれはまずいって!」

 なんだかんだでラビはお預かりしているお子さんだ、最終的には返さないという選択肢は無いだろう。

『あら?じゃあヨーイチを群に引き込めば良いのかしら?

 この姿だったら選んでくれる?ちょっと待ってくれればもっと大人にもなれるけど?』

 あ、やばい。

 なんかラビもお姉さんモードの方に思考が引っ張られてきてる気がする。

「だー!もう!全部終わったら村で暮らせば良いだろ!そしたらラビもすぐに食べに来れるじゃ無いか!」

 俺がそういうとラビはシュッと通常モードに戻って。

『うん!約束だよ!』

 と凄くいい笑顔で答えるのだった。

 あれ?これ俺魔王倒しても帰還選べないフラグなんじゃね?

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