第123話 一人前の 男になりたい

『このドラゴンの皮だがな、まず耐久性は皮で並ぶ物がないほど強い。

 30年置いておいても全く劣化する気配がない』

 親父さんはそう言って皮を引っ張る。

『更に高位の魔法耐性もあるから普通の火はもちろん魔法の火や攻撃魔法も通さない強さがある、このドラゴンを倒した宮廷魔道士様ってのはとんでもない魔法を使ったんだろうな』

 という親父さんの言葉に無い胸を張るアイさん。

 いやその魔法のせいで今その姿なんだろがい。

『更にはこの皮が纏っているドラゴンの気配で大概のモンスターは近寄れない、テントを張らずとも荷物に混ぜておくだけで効果があるだろうさ』

 おお!それは助かる!

 この先スライム多発地帯だからな!

「しかしよくそんな素材を加工出来ましたね?」

 という俺の問いに親父さんは。

『コレを見てくれ』

 と言って取り出したのが魔封石がついたハサミやナイフだった。

「なるほど、刃物に切断の魔法でもかけたんですか?」

 と俺が聞くと。

『それじゃあ皮の持つ魔法耐性に邪魔されてただの刃物になっちまう、逆だよ。

 ドラゴンの魔法耐性は魔法を阻害する魔法みたいなもんでな、その魔法を魔封石に吸い込んでる間に切るのさ。

 ただしこの魔封石一個で吸えるのはこのくらい切る間だけどな』

 そう言って親父さんが指で示した長さは約10cmぐらい、その度に魔封石を取り替えていたらそりゃ時間がかかるはずである。

「そんなに手間暇かかった物をタダでくれるんですか?」

 俺が聞くと親父さんは。

『なんでだろうな?アミダラさんに繋いでもらった恩ってのもあるが何故かこれだけはあんたたちにやらないといけない気がするんだ』

 そう言って不思議そうな顔をする親父さん。

「じゃあその分たくさん買い物させてもらいましょうかね!」

 そう言ってみんなに目配せする俺、金ならあるんや。

 みんな各々欲しいものを見繕い始めたところで俺はあるものに気づく。

「親父さん、コレが例の?」

 俺が見つけたのは箱に雑に放り込まれた魔封石、普通の魔封石より黒光している気がする。

『ああ、それが皮の加工に使った魔封石だ、使い道がないゴミだけどな』

 という親父さんに。

「じゃあコレ全部売ってもらえますか?」

 と俺がいうと。

『そんなに気を使わなくてもいいぞ?あんたゴミを買う事で金を払おうとしてるだろう?』

 そう言われたので。

「いや、何かの素材に使えるかなと思ったんで純粋に欲しいんですよ、親父さんがゴミって言うなら普通に魔封石の値段を払いますから」

 道すがらアイさんと研究してみるのもいいし何かに使えれば儲けもの、ある意味浪漫なのだよ浪漫!ゲームとかでも浪漫装備ってあるだろ?

『そこまでいうなら持っていきな、って嬢ちゃんたちも結構買う気満々だな』

 後ろを見るとみんなが思い思いにかき集めた雑貨を持って待っていた。

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